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検索キーワードに見る清張作品の傾向と対策?

(その二十九:戸籍)

清張作品の書き出し300文字前後からあぶり出すキーワード!
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●戸籍

火の記憶
火の路(上)」(改題)(原題=火の回路)


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●訳あって、親の戸籍を調べています。
その理由は
戸籍の載事項は正しいと思うが誤記もあるようだ。家系図は血の流れが見える。 でも、生活実態は分からない。
私は両親のことを何も知らなかった。と、言ってもよい。だから、せめて戸籍だけでも調べてみて、はっきり知りたいと思った。
父母のこと、とりわけ父の幼少期のぼんやりとした疑問をはっきりさせてみようと考えました。
それは推測を交えての曖昧なものにしかならないだろうが、それも仕方ないだろう。 父の世代はすべて鬼籍に入り知る人は居ないと思う。

こんなことを考え始めたのはごく最近のことでした。そのきっかけは、松本峯太郎の事を知ったからです

最近、「半生の記」【半生の記と自叙伝について】や骨壺の風景」・ 「父系の指」を紹介作品に取り上げていました。
これらの作品で、清張の父、峯太郎が登場します。(別名での登場が多いですが)

自叙伝的作品として取り上げ読んでいるうちに、自分の父と比べてみる切っ掛けとなったのでした。


「籍」だけだと、11作品に上った。
黒の図説 第十二話 「高台の家
黒い画集 第一話 「遭難
小説日本芸譚(改題) 第十一話 「雪舟
火の記憶
陰謀将軍
背伸び
隠花の飾り 第十一話 「遺墨
火の路(上)
密宗律仙教
老十九年の推歩
よごれた虹


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2022年9月21日

 



題名 「戸籍 上段は登録検索キーワード 
 書き出し約300文字
火の記憶 失踪.兄.結婚.母.父.別な男.ボタ山.三人.市長.手紙.張りみ.N市.B市.九州.胃癌.喪中ハガキ.刑事
頼子が高村泰雄との交際から結婚にすすむ時、兄から一寸故障があった。兄の貞一は泰雄に二,三回会って彼の人物を知っている。貞一の苦情というのは泰雄の人柄でなく、泰雄の戸籍謄本を見てからのことだった。その戸籍面には、母死亡、同胞のないのはいいとして、その父が失踪宣告を記されて名前が除籍されていた。「これはどうしたのだ、頼子は高村君からこのことで何か聞いたかい?」滅多にないことだから、貞一が気にかけたのであろう。頼子の家では父が亡くなってからは万事この兄が中心になっている。三十五歳、ある出版社に勤め、既に子供がいる。「ええ、何かご商売に失敗なすって、家出されたまま、消息がないと仰言っていましたわ」それはその通りに頼子は聞いていた。が、泰雄がそれを云ったときの言葉の調子は何か苦渋なものが隠されているように感じられた。それで悪いような気がして、そのとき、頼子は深くは訊かなかった
火の路(上)
(改題)(原題=火の回路)
明日香村の中心になっている町なみから南に行くと、人家の集まりがしばらく途切れてのち、岡の小さな商店街に入る。戸籍のように正統にいえば奈良県高市郡明日香村岡だが、岡寺のあるところとして通りがいい。そこまでの舗装路は以前のままの県道だから東側の丘陵の線に沿ってゆるやかな屈折がある。西側の田畑になっている。ひろい丘陵にも田にもまだ冬の色が残っていたが、晴れた午後の、かなり強くなってきた陽ざしにそれがぬくめられていた。田は鋤に返されたままの粘りのある黒い土を見せ、畑には短い麦が青い色を伸ばしかけていた。が、ひろびろとした風景には緑が少なく、主調は黄色と茶褐色、丘陵の雑木林は裸の梢の群れ、幹にからみついたツタカズラも枯れたままで落葉のつるも下草にずりさがっている。田圃の木立もわびしいが、道から見える孤立した林に梅が白くのぞいていた。

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