●蒼は青にあらず
「蒼」:深い青色。緑がかった青い色。

【青】
「青春の彷徨」(原題:死神)「週刊朝日別冊」・時代小説傑作集1953年(昭和28年)6月
「壁の青草」(原題:少年受刑者)「新潮」1966年(昭和41年)5月号
●書き出しに登場する【蒼】(12作品)
@『中央流沙』
>眩しい広間の床の前には、三十七,八ばかりの、顔の蒼白い男が座っていた。
A影の車 第三話 『薄化粧の男』
>夜明けの光が雑木林の向うに蒼白く射している。あたりはまだうす暗かった。
B黒い画集 第七話 『凶器』
>冬の午前七時といえば、陽がまだ霧の上に出ない蒼白い朝である。
C『河西電気出張所』
>係員は蒼白い顔をしている信一を窓口からのぞき、手もとの薄い書類綴を繰った。
D『脱出』
>神経質で、顎が尖って、いつも蒼白い顔をしている。もとから気鬱症だったが、だんだんひどくなった。
E『西街道談綺 五』
>蒼い顔をして思案にふけっている。その目は据わっていた。
F『黒い福音』
>広い畠と、その向こうに立っている林とが蒼褪めて黝み、端には白い夕靄がたつ。
G無宿人別帳 第四話 『逃亡』
>宗七は蒼い顔をして三日ばかり寝込んだ。それを叩き起こして坑内に追い込んだのは、鉱山の地役人である。
H『群疑』
>彼は途上で変を聞くと、蒼惶として伊賀、伊勢の間道を潜行して領国三河に遁げ帰った。
I『眼の壁』
>窓から射す光線は弱くなり、空には黄昏の蒼さが妙に澄んでいる。
J『火の路(下)』
>窓の外は俯瞰が消えて白い雲と蒼い空だけになっていた。
K『市長死す』
>いつも定宿にしている目黒の蒼海ホテルに六日間滞在して、..
殆どが、顔色、景色の色だが、ひとつだけ、ホテルの名前で登場している。
12作品中、5作品が「蒼白」
題名としての「蒼」は多くはないが、清張の好きな色と言える。
2021年07月21日記
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