松本清張_随筆 黒い手帖・現在の犯罪/松川事件判決の瞬間

題名 随筆 黒い手帖 現在の犯罪/松川事件判決の瞬間
読み ズイヒツ クロイテチョウ ゲンザイノハンザイ/マツカワジケンハンケツノシュンカン
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集30〕
●「黒いノート
   小松川女子高生殺し事件
   新興宗教殺人事件
   柏木の若妻殺し
   貨車強殺事件
   「目撃者」の眼
   三鷹のピストル事件
   筆跡鑑定の信憑性
   偽装他殺事件
   犯罪捜査の壁
   動機無き殺人
   贋造紙幣の話
●「『日本の黒い霧』について
   はじめに
   帝銀事件の疑問
   下山事件の受益者
   事件の戦略性
   史家の方法を踏襲
   指揮権発動の問題
   朝鮮戦争と事件
●「
松川事件判決の瞬間
   判決の瞬間
   門田判決の構成
   蔭の演出者
   松川判決の反響
   残された問題
随筆 黒い手帖 推理小説の魅力
  ●「
推理小説の読者
  ●「
日本の推理小説
随筆 黒い手帖 推理小説の発想
  ●「
小説と素材
  ●「
創作ノート(一)
  ●「
創作ノート(二)
随筆 黒い手帖 現在の犯罪
  ●「黒いノート
  ●「
『日本の黒い霧』について
  
●「松川事件判決の瞬間
随筆 黒い手帖 二つの推論
  ●「
スチュワーデス殺し事件
  ●
「下山事件白書」の謎
随筆 黒い手帖 推理小説の周辺
  ●「
スリラー映画
  ●「
楽屋裏の話

随筆 黒い手帖 「あとがき 」
本の題名 随筆 黒い手帖【蔵書No0176】
出版社 中央公論社
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1961/09/30●13版1974/05/20
価格 680
発表雑誌/発表場所 「週刊公論」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)8月21日号
コードNo 19610821-00000000
書き出し 昭和三十六年八月八日、仙台高等裁判所の荘重な古い建物の天井に、四つの扇風機がゆるやかに回っている。この日久しぶりに晴れた空から、夏の陽ざしが窓のステンド・グラスの色を輝かしていた。傍聴席にはかすかな私語と挨拶が交わされている。九時きっかり、正面のドアが開いて門田裁判長が二人の陪席判事を従えて現れた。型のごとく全員起立。しばらくテレビや映画の撮影が行われた。門田裁判長は、最初、顔を赤らめ、ときどき唇のあたりをまげたりする。さすがにすこし上気しているようだった。二人の若い陪審判事は、身動きもしない。カメラのフラッシュが二人の眼鏡を光らせる。よいよ判決になる。カメラ陣退場。眼鏡といえば門田裁判長は書類を見るのに老眼鏡をかけ、被告の名を呼ぶとき、眼鏡をはずして相手の顔をのぞいていた。被告は、呼ばれると無言で一人ずつ立ちあがる。最後の判決を直前にして、後ろから見ても被告たちの姿は緊張している。門田裁判長は咳ばらいを一つしたあと、平静な口調で主文を読み始めた。
作品分類 随筆
検索キーワード