〔(株)文藝春秋=松本清張全集9(1971/12/20):【黒の様式】第五話〕
題名 | 黒の様式 第六話 内海の輪 | ||
読み | クロノヨウシキ ダイ06ワ ナイカイノワ | ||
原題/改題/副題/備考 | ●シリーズ名=黒の様式 (原題=霧笛の町) ●全6話 1.歯止め 2.犯罪広告 3.微笑の儀式 4.二つの声 5.弱気の虫(弱気の蟲) 6.霧笛の町(内海の輪) |
●全集(7話) 1.歯止め 2.犯罪広告 3.微笑の儀式 4.二つの声 5.弱気の蟲 6.内海の輪 7.死んだ馬《小説宝石》 |
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本の題名 | 松本清張全集 9 黒の様式■【蔵書No0087】 | ||
出版社 | (株)文藝春秋 | ||
本のサイズ | A5(普通) | ||
初版&購入版.年月日 | 1971/12/20●初版 | ||
価格 | 880 | ||
発表雑誌/発表場所 | 「週刊朝日」 | ||
作品発表 年月日 | 1968年(昭和43年)2月16日号~10月25日号 | ||
コードNo | 19680216-19681025 | ||
書き出し | 旅館の帳場--近ごろはしゃれてフロントとよんでいるところもあるが、深まった家から門に出るまで庭石の通路の横にそういう関所がある。れんじ窓になっていて上半分までは藍染めのノレンが下がり、客からはちょっと見えないようにしているが、そこからは灯が通路までこぼれているし、内側の人間にはもちろん前を出入りする客の顔が分かっているはずだった。客が顔をそむけても、ありがとうございました、と中から女中の声がかかるのである。三ヵ月めくらいにくるのだが、帳場の女がこっちの顔を覚えているのかどうか。、宗三は、その前を通るのがいつも辛い。部屋に来る係の女中は順番らしく、そのたびに違っているのが助かるが、帳場の女は変わらないのだろう。しかし、三ヵ月に一度のことだし、ほかの客も多い中だから印象はうすいようにも思われる。とにかく、この関所を通り抜けて外に出るとほっとする。 | ||
あらすじ&感想 | 蛇足的研究で想像した通り分かりやすい出だしで、展開だ。 不倫と思われる男女は密会の場所から出て、タクシーで別々の場所に向かう。 次回合う約束をしているので女もウキウキしていた。 二人の馴れ初めが綴られる。女は兄嫁だった。今は再婚していて松山の老舗の主婦、美奈子。 男は義弟の宗三。(なぜか、二人とも名字が出てこない) 物語は、宗三の内面からの思いで綴られている。 標準的な小説の手法なのだろうが,男の思いは本音で書かれているが、女の気持ちは男の想像の範囲に留まる。 義理の姉と義理の弟が男女の関係になる経緯は小説に任せるとして、 その展開ももっぱら義弟である宗三の視点から語られている。 しかし、義姉がそれを決意する場面は、印象的に描かれていて、義姉の積極的行動が決意を感じさせられる。 その決意は、小説内では特に表現されていないが、義姉の復讐ではと感じさせられた。 美奈子の夫婦関係が破綻した状況と兄弟の関係・家族の関係など破綻が見通せる行為を美奈子は実行したのだった。 美奈子は、宗三より一つ年上だった。外見は六つくらい宗三が年上に見えた。 宗三は考古学を教えていた。いつもなら三ヶ月に一度くらいの逢瀬だが、 一ヵ月先くらいに発掘の関係で岡山まで出張があると言った。 喜ぶ美奈子と再会の約束をする。 美奈子と別々のタクシーに乗り自宅に向かうタクシーで宗三は少しトラブルがあった。 地理に不案内な運転手は、道を間違え、宗三が道案内をする羽目になる。 田舎から出てきたばかりの運転手のようだ。これは第一の伏線になる。 池袋から荻窪に向かう場合どのようなコースを通るか? これが意外と難しい。知らないと、明治通でそのまま新宿まで行き青梅街道で荻窪まで行こうとする。 池袋はどこから乗ったのかによるが、宗三は、千歳橋から目白通り、青梅街道のコースを指示した。 美奈子と宗三は偶然再会を果たす。 去年の春、宗三は銀座で偶然美奈子と再会した。 『焼けぼっくいに火が付く』と言えた。 (あなたに教えたのは私よ)美奈子の言葉は十五年前の新潟の帰りに水上温泉で二人で泊まった出来事だった。 四十に手が届こうとしている宗三は、当時の自分の未熟さを美奈子の言葉から知ることになる。 (あのときからみると、あなたも、すっかり男らしくなったわね) 話は一旦、美奈子と宗三の過去の話になる。 美奈子が宗三の兄寿夫と結婚した後で、二人に関係が出来た当時の話である。 二人が銀座で再会するまでの説明でもある。 話は現在に戻る。 発掘調査にかこつけての密会が、大学の都合で中止になる。 美奈子があれだけ喜んでいたので、落胆させる訳にも行かず、むしろ自身の欲望もあり、プライベートで旅行を決意する。 岡山で会うことにして、美奈子に連絡すると、心から喜んでいるようだった。 新幹線で向かう宗三。宗三は、ビュッフェで長谷徹一に会う。 長谷は東京の新聞社に勤めていて、美術関係を担当している。 学生時代の友人であるが、宗三は少し気になった。大阪までと答えた。 幸い長谷は京都で降りた。この場面も伏線と言える。 しばらく不倫旅行の記述が続く。殆どが宗三の目から描かれる。 美奈子の気持ちは、宗三の考えを通しての表現で、半分は宗三の希望的な気持ちと言えた。 ![]() 倉敷から尾道へ二時間足らずを電車で移動した。駅前の客待ちタクシーで『内海荘』まで向かった。 週刊誌の連載を意識してなのか、不倫旅行の内容が事細かに描かれている印象がある。 サービスカット的な場面も展開される。 清張作品であり、『黒の様式』シリーズの推理小説なのだから、事件が起きなければならない。 女性週刊誌のような、恋愛・不倫小説のようで何も起きないのである。 読了後伏線だったのと思う場面がちりばめられているが、ここまでは何も感じられない。 不倫旅行を目一杯楽しみたい二人は、予定を延ばすことに合意する。 予定変更を合理的にするため、飛行機を利用することを思い立つ。 ギリギリまで遊んで、伊丹空港から松山と羽田に飛び立つことにした。 伊丹空港でチケットを手に入れて、有馬温泉で泊まることにした。 予期しないことが起きる。 伊丹空港で、宗三はまたしても長谷徹一に会った。立ち話の最中に美奈子が近づいてくる。長谷の目は美奈子に移る。 長谷は美奈子と知り合いだった。長谷が美奈子と話し始めのを機会に宗三はその場を離れた。 長谷は、美奈子を、「おや、伊予屋の奥さんじゃありませんか?」と、呼んだ。 伊丹空港からタクシーに乗り込んだ二人は、有馬温泉に向かうが車中は、絶望に包まれる。 特に美奈子は、長谷に宗三との関係を知られたと確信する。大丈夫だという宗三も確信は無かった。 有馬温泉の宿はタクシーに任せると、『明月荘』という宿に案内された。 愉しい不倫旅行は一転した。それは、不安定ながら二人の家庭の平穏が前提のバランスの上でのことだった。 美奈子は、長谷に何もかもバレてしまい、最早松山には帰れないと言い張った。 宗三の、男の身勝手は、特に波風の立たない家庭が前提だった。 美奈子との再会後の付き合いも美奈子が言い出したことでもあり、肉欲に溺れる打算は、美奈子を都合の良い女と考えていたのだった。 ところが、理性もあり、賢い女と考えていた美奈子は、長谷に関係を見破られたと確信して狼狽した。 宗三は、自己保身から、美奈子が身を滅ぼす危険な女へと変身させていった。 美奈子はヒステリックに狂った。彼女の本性かもしれない。 >「あなたはまだ、私の気持ちが分かってないのね。わたしは、もう、あなたなしには生きてゆかれなくなったわ。 >そういう女になったのよ。どんなことがあっても離れられないわ」 痴話喧嘩は、本音をたたきつける結果になった。 推理小説的になってきた。男は女が邪魔になってくる。 「明月荘」での夜は、宗三を妄想の世界に引き摺りこむ。妄想は、現実味を帯びる。 宗三と美奈子の関係が肉欲を挟んで一つの典型に落ちていく。 その典型は、二つの作品に見られる。『虎』・『渡された場面』 男は女を殺す目的で情事に誘う、それも屋外である。日常と違う場所での行為に女の興奮を餌にするやり方である。 『明月荘』を後にした二人はタクシーで空港に向かう。宗三は計画を実行する場所を物色する。 空港に向かう途中、蓬莱峡通る。タクシーの運転手に紹介されたこともあり、宗三は決意し、実行に移る。
半年が過ぎるが、宗三の予期する変化は無かった。 犯罪者は、犯罪が暴露されることを恐れ夜も眠れない。ましてや殺人事件では、死体がどうなったのか知りたい。 崖から落下した死体は、発見されれば必ずニュースになり新聞記事になるはずである。宗三は調べてみるが、そのような報道は無かった。 国会図書館で調べた宗三だが、三度目に新聞を閲覧したときだった。 愛媛県の地方紙に「伊予屋」西田慶太郎の妻美奈子が旅行先から行方不明になり、捜索願が出されているという記事を発見する。 美奈子は間違いなく死んでいるようだ。 宗三は美奈子との旅行の痕跡を検討した。 ①最初に泊まったのが、岡山の「備前屋ホテル」。早く着いた美奈子が宗三のぶんまで早川の名で、記帳していた。 ②尾道の駅前からタクシーで「内海荘」。「内海荘」では、宿帳を出さなかった。 ③旅行の予定を変更して、有馬温泉に泊まり翌日、伊丹空港から松山・羽田へとそれぞれ帰る予定にした。 有馬温泉の「明月荘」へ向かう。横浜の中村一雄名の記入だが、いずれも美奈子の記帳だった。 伊丹空港で、長谷徹一に遭遇して二人の旅は一変する。 ④有馬温泉の「明月荘」からタクシーで伊丹空港に向かった。途中の蓬莱峡で降りて散策することにする。(殺害場所の物色) 何も問題は無い、宗三は自分に言い聞かせるのだったが、どうしても気になるのが長谷に遭遇したことだった。 長谷だけが、美奈子と宗三の不倫旅行を目撃していると言えた。 ただ、警察からも何も言ってこないのは、伊丹空港で会った長谷は、美奈子と宗三の関係を理解していなかった。と思いかった。 宗三は、長谷に確認したくてたまらない。犯罪者の心理として当然である。彼は爆発物と言えた。 問題は、いかにして長谷に会うことが出来るかである。 その機会がやってきた。高校の時の校長が藍綬褒章を受けたのである。その祝賀会が同窓生で開かれることになった。 祝賀会のパーティー会場で宗三は、長谷と会った。騒然新幹線であった話になり、長谷の実家が三代続く洋品店である事を知ることになる。 そして、長谷は、伊丹空港で会った女の話を始めた。どうやら、その女(美奈子)と宗三を結びつけてはいないようだ。 宗三は、吐息が出るほど安心した。 パーティーで長谷に会って半年、美奈子を殺して一年近くになる。 宗三に発掘調査の依頼が舞い込む。その依頼には宗三も予期していた。 しかし、場所は危険な場所だった。行きたくない場所で断りたかったが、覚悟を決めて、発掘の調査依頼を引き受けた。 タクシーで発掘現場に向かう。宗三が気になるのはタクシーの運転手だった。 あの日に、「明月荘」から美奈子と宗三を運んだ運転手でないかが問題なのだ。若い運転手で宗三は一安心だった。 現場に着く前に、農家の縁先に警官が居るのを見かけた。案内役の講師の塚田に、「あれは何だね?」 >「なに、一週間前に、この山の中で女の死体が発見されたんです。一年くらい経っているそうですがね。 >どうも他殺らしいというので警察が来て調べているんです。......先生、では、現場に行きましょうか」 宗三は驚愕した。何故他殺なのか知りたくてたまらないが、塚田は無関心で宗三に発掘現場へ急がせる。 正面から聞くことの出来ない宗三は、発掘現場に着くまでに同行の学生に聞いた。 絶望的な答えだった。 >「ほぼ一年前に、有馬温泉からこの蓬莱峡の入口まで一組の中年男女を乗せたタクシーの運転手がいるんです。 >運転手はそれを家族に話したことがあったんですね。それを警察が聞き込んで.....」 その運転手は三ヶ月前に死んでいた。 張りつめた心臓が、がたんと音を立ててゆるんだようだった。 塚田から発掘現場に着いたことを知らされた。もはや、宗三は発掘など、心ここにあらずだった。 学生の話では、有馬温泉に泊まった宿も特定されているようだ。 ここまで読み進めると、この小説には、伏線がかなり埋め込まれている。ここでは、宗三が美奈子を殺すために山に分け入るとき スーツのボタンを落として事が書き込まれている。発掘現場を離れる言い訳をして、殺害現場付近に戻ろうとする宗三。 犯人はやはり、現場に戻るものなのか? 結局ボタンも、事件に関係する遺留品は発見できなかった。 が、その替わりの物が出てきた。 事の成り行きを調べるために、宗三は図書館で愛媛を主体とする地方紙を調べた。 記事から、美奈子のスーツケースやハンドバッグが発見されていないことを知る。 しかし、捜査は宗三の身辺におよんでいる気配は無かった。 ただ、亡父の法事で兄弟が集まった席で、長兄の寿夫が元妻の美奈子が殺されたことを知っていた。 しかも、警察が、元夫の寿夫の所にやってきたというのだ。 捜査は思わぬ方向から宗三に近づいてきていた。そこに宗三は新たな不安を抱え込んでいた。 考古学上の知識が小説の中にふんだんに取り入れられている。直感的には「万葉翡翠」を思い出した。清張得意の展開とも言える。 あの発掘現場で手に入れた釧(クシロ)は、腕輪の一種で、大発見であるが場所が悪い。塚田や学生にも隠していた。 ●釧(くしろ) ![]() 出典: フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』 石釧(垣内古墳出土) 釧(くしろ)は古代の日本の装飾品で腕輪の一種。 ▲歴史 日本では、縄文時代には、貝や骨、石、木、土などを素材とする腕飾りなどのアクセサリーが作られていた。 古墳時代になると南海産の貝輪がもとになったとみられる銅釧(どうくしろ)や石釧などの腕飾りが出現し、 これらの装飾品は権威の象徴とみなされた。 宗三は考古学上の幸運を公にすることが出来ない。 しかし、学徒としての心理から、発表したくてたまらなかった。言い換えれば名誉欲なのかもしれない。 誰かにチラリと見せるだけでも良い。秘密に出来ない欲望を抑えることが出来なかった。 宗三は、他大学の山口と言う考古学の教授に見せた。眼をむいて驚いた。宗三は発見場所を隠していて不明としていた。 だから、「釧」について、発表や物を書くという事は考えていないと言った。 山口は、羨望からも、「惜しいね、全く、惜しいね」と繰り返した。(「万葉翡翠」を連想させられた) 宗三は、教授に昇進した。 話は急展開する。宗三は発見した「釧」と同様の物が他で発見された。東京のG大学の山口教授がそれに関連して雑誌に短文を発表した。 山口教授とは、宗三が「釧」を見せた教授だった。 短文では、Z大学の江村宗三教授から見せられたことがあると記されていた。ここで初めて、宗三の名字が「江村」として登場する。 短文が掲載された雑誌は、総合雑誌で、考古学の専門家だけが読者ではない。 捜査の手が宗三に迫るまでの過程を一々追いかけるまでもなく結果に向かってラストスパートである。 警察の捜査はかなり進んでいた。宗三にたどり着いていないだけと言えた。スーツケースもハンドバグも警察の手中にあった。 蛇足だが、宗三の名字がここまで隠されていた意味が分かる。美奈子の元夫は、江村寿夫である。 最早芋づるである。 美奈子が東京に出掛ける際に立ち寄る場所に長谷徹一の実家である洋品店も含まれている。 広島や岡山の旅館やタクシー会社を虱潰しに当たっていた警察は、尾道駅から「内海荘」まで送ったタクシー運転手の証言を得た。 運転手は東京でタクシーの運転手をしていた。 江村宗三を池袋付近から荻窪まで乗せていた。 完全に外堀が埋められた状況で、The End 振り返ってみると、美奈子の気持ちが理解出来ない。最初に美奈子と宗三が関係を持つのも美奈子の誘いだった。 宗三には男として、下心は有ったと思うが、宗三が手を出した訳ではない。 再会後の逢瀬も美奈子が誘ったようなものだった。宗三の男としての下心は「愛」と呼べる様な物ではない感じだ。 宗三の気持ちは男の身勝手につきる。美奈子は都合の良い女だったのだ。不倫の関係をどうするとかの目的も無くズルズル続けていたのだ。 それは、美奈子にも言えるのだが、彼女は経済的にも自立できる能力がありながら男に依存していた。 宗三と再会するまでの美奈子の夫婦生活は多くは語られていないが精神的にも肉体的にも不満が募っていたのだろう。 しかし、宗三の場合は少し違っていた。卑怯な男として、自ら仕掛けた浮気でも不倫でも無いと都合良く理解していたのだ。 二人の関係は、肉体以外では希薄な関係だったと言える。宗三が安易に殺人という清算方法に進むことは、動機としても弱い感じがする。 ※蛇足 ①状況設定が少し強引すぎないか? 『明月荘』を後にした二人はタクシーで空港に向かう。宗三は計画を実行する場所を物色する。 タクシーの運転手の話から蓬莱峡にさしかかると、車を降りて、山を散策することにした。 宿を出た二人は急に予定を変更したことになる。 通常なら、宿を出るとき空港までと依頼しているはずである。それを途中で降りられれば運転手はガッカリするのではないだろうか? 長距離の客が途中下車をすると運転手としてはやりきれないものらしい。 しかも、スーツケースを持ち、蓬莱峡を散策とは不自然だ。帰りの交通手段を有馬温泉帰りの空車のタクシーを当てにするなど考えにくい。 結果としてタクシー運転手はこの乗客が印象に残ったはずである。だから家族に話している。 キーワードとして「タクシー」が、かなり利用されているが少しご都合主義的である。 ②雑誌から発展する捜査 「渡された場面」では、雑誌「文芸界」が捜査一課長の目に止まる。 「内海の輪」では、総合雑誌の短文が、橋本警部補の目に止まる。 雑誌だけではなく、新聞記事などが事件解決に向かう小道具として登場することは度々あるようだ。 2024年01月21日記 |
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作品分類 | 小説(中編/シリーズ) | 97P×1000=97000 | |
検索キーワード | 兄嫁・再会・池袋・タクシー・道順・発掘調査・大学教授・明月荘・内海荘・岡山・尾道・松山・洋品店・新聞記者・伊丹空港・蓬莱峡・釧・考古学 |
登場人物 | |
江村宗三 | Z大学の助教授(教授になる)。兄嫁の美奈子と男女の関係になる。 15年を経て再開する。一度限りの関係であったはずが、「焼けぼっくいに火が付く」。宗三にしてみれば美奈子は都合の良い都合の良い女だった。 不倫旅行の果てに痴話喧嘩から、美奈子は宗三を脅かす女へと変貌する。宗三は身勝手な理屈で美奈子を殺す。 |
西田美奈子 | 宗三の義姉に当たるが、夫(寿夫)の不貞から、別れることになる。弟の宗三と関係を持つが、余りにも軽率で、夫の裏切りに対する復讐とも言えた。 松山で再婚し、洋品店「伊予屋」の女将として歳の離れた夫と暮らしていた。 15年ぶりに宗三と再会するが、その時の行動やその後の関係はむしろ美奈子が積極的にリードしたと思える。 再婚後の美奈子は、自立すべく才能を発揮するが、歳の離れた夫とは精神的にも肉体的にも満足していなかった。長谷徹一とは知り合いだった。 |
西田慶太郎 | 松山の洋品店の主人。美奈子の再婚相手。 美奈子が浮気をしているとは全く気がついていない。行方不明の美奈子の捜索願を出す。 |
長谷徹一 | 宗三の学生時代の親友。東京の新聞社で美術関係の仕事をしていた。 宗三が美奈子と会うために岡山に向かう新幹線で、長谷と宗三は会う。長谷は京都で降りる。 再び長谷は、伊丹空港で宗三と会う。立ち話の最中に美奈子が近づいてくる。美奈子に眼を留めた長谷は「伊予屋」の奥さんと声をかける。 そのすきに、宗三は二人の場所から離れる。長谷は、二人の関係には気づいていなかった。 |
江村寿一 | 宗三の兄。宗三は、寿夫が美奈子と別れ話をする現場に付き添いで同行する。その帰りがけに宗三は美奈子と関係が出来る。 新聞記事から寿夫の元妻美奈子が殺されたことを知る。 父の法事の席で宗三にその事を話す。 |
山口教授 | 江村宗三とは別の大学の考古学の教授。 宗三から「釧」を見せられ驚く。雑誌にその事を投稿する。決定的な傍証となる。 |
橋本警部補 | 山口教授が投稿した、総合雑誌の短文を読み興味を惹かれる。 美奈子の元夫が江村寿夫で、短文に登場する、江村宗三の関係を調べて、美奈子との関係を知ることになる。 |
タクシーの運転手(尾道・池袋) | 東京で宗三が乗ったタクシーの運転手。池袋から荻窪まで乗せるが、道が不案内の運転手は、宗三に間違いを指摘されながら案内されて、送り届ける。 この運転手は、尾道から「内海荘」へ送った人物と同じだった。東京でのタクシーの仕事に馴染めず、故郷の尾道で仕事をしていた。東京での出来事を覚えていた。 |
タクシーの運転手(蓬莱峡) | 「明月荘」から伊丹空港に美奈子と宗三を送る予定で宿を出る。蓬莱峡見物を望んだ二人を蓬莱峡で降ろす。 運転手は、死亡していたが、この出来事を家族に話していた。 |