松本清張_表象詩人(【黒の図説】第十一話として発表)

(株)光文社=表象詩人(1974/02/05)【表象詩人】として発表〕

題名 表象詩人
読み ヒョウショウシジン
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=黒の図説
●全12話
 1.
速力の告発
 2.
分離の時間
 3.
鴎外の碑
 4.
書道教授
 5.
六畳の生涯〔(株)文藝春秋=松本清張全集10〕
   
六畳の生涯〔(株)光文社=生けるパスカル〕
 6.
梅雨と西洋風呂
 7.
聞かなかった場所
 8.
生けるパスカル
 9.
遠い接近
10.
山の骨
11.表象詩人
12.高台の家
(株)光文社=表象詩人
表象詩人
本の題名 表象詩人【蔵書No0044】
出版社 (株)光文社
本のサイズ 新書(KAPPANOVELS)
初版&購入版.年月日 1974/02/05●31版1976/09/01
価格 580
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1972年(昭和47年)7月21日号〜11月3日号
コードNo 19720519-19720714
書き出し 批評家というのは、その詩的な抽象用語を駆使して作品の鑑賞論を展開しがちである。とくに美術評論家の作品評とか展覧会評となると、その文章の詩的抽象性の極致に感嘆するわたしなどは、美術評論家のこうした語句を蒐集して抽象表現の手本にしたいと思っているくらいである。もちろん、そうした表現は、評者の考えを述べるに当たって従来のボギャブラリーでおさまりきれないから、評者自身の手により新しく造語されるのだろう。しかし、このスタイルが案外評論の権威的な体裁となっているようだ。《若い頃、ある本について自分の直感的な感じと、権威ある批評家の感じとが食い違った場合、わたしは躊躇なく、自分の方が誤っているのだと結論した。批評家が、いかにしばしば、月並みな考えを受け入れるものであるかを知らなかったし、またあまり知らないことでも、確信をもって語ることが出来るとは、夢にも思わなかったのである》(モーム「要約すること」。中村能三訳) たとえば、ここに或る小説家が、作品活動の上で長い遍歴ののち、初期の作品と同じか、または似たようなテーマの小説を書いたとする。批評家はそれを見て、その作家の「回帰」だと言う。一巡して原点に戻ったのか、それとも原点からさしたる発展の才能がなく、仕方なしに元に戻ったのか、そのへんはこの詩的用語では曖昧である。さて、ある傾向の詩人の作品に難解性がいつまでも維持できるのは、小説家にくらべて文章が格段に短いためエネルギーが維持できるのだ、という詩人に対して失礼な憶測的解説がある。しかし、これはやはり資質の問題であろう。たとえば、日夏幸耿之介、西脇淳三郎といった「超自然主義」の詩人は、かなり老境にはいってもその活動がつづいていた。この両氏とだいたい似た傾向の詩人として、かつては木下杢太郎との野口米次郎とをあげることができる。。実際、現在でも「日本文学全集」といったものに、この四氏が同じ巻きでおさまっているのを見かける。
作品分類 小説(長編/シリーズ) 169P×620=104780
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