松本清張_黒の図説 第五話 六畳の生涯

〔(株)文藝春秋=全集10(1973/05/20)【黒の図説】で第五話として発表〕

題名 黒の図説 第五話 六畳の生涯
読み クロノズセツ ダイ05ワ ロクジョウノショウガイ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)光文社=生けるパスカル〕
●シリーズ名=黒の図説
●全12話
 1.
速力の告発
 2.
分離の時間
 3.
鴎外の碑
 4.
書道教授
 5.六畳の生涯〔(株)文藝春秋=松本清張全集10〕
   六畳の生涯〔(株)光文社=生けるパスカル〕
 6.
梅雨と西洋風呂
 7.
聞かなかった場所
 8.
生けるパスカル
 9.
遠い接近
10.
山の骨
11.
表象詩人
12.
高台の家
●全集(6話)
1.
速力の告発
2.
分離の時間
3.
鴎外の碑
4.
書道教授
5.六畳の生涯
6.梅雨と西洋風呂
本の題名 松本清張全集 10 黒の図説【蔵書No0041】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/05/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1970年(昭和45年)4月3日号〜7月10日号
書き出し 東京都の西のはずれにある区で、郡部の地区に接している一帯は、十年前とは見違えるように多くの家が建ち、きれいな住宅街がひろがっている。ある場所では五,六年前は低湿地で、大きな雨が降るたびに水が出て、雑草が浸かっていたところも、土盛がなされ、体裁のいい洋風住宅がならび、新しい道路が四方につくられている。最近、建売りの家を買った夫婦者が、まだもの珍しそうに界隈を散歩していた。晩春の黄昏で、夕食をすませたあとのそぞろ歩きには気持ちのいい季節である。よその庭のうす暗いところから散り残りの桜が白くにじんだりしていた。「志井田医院か。内科だね」夫は鉄柵の門の前に立ちどまって洋館の看板を見上げた。窓は暗かった。「お医者さまも近いし、安心だわ」夫のうしろにいる妻が言った。「小児科も診るのでしょうか?」「そりゃ診るだろう。こういう場所の医院だからね。内科なら、たいてい小児科を兼ねている」「子供が病気になったとき、応急の手当てはしてもらえますわね。近いからありがたいわ」夫婦は足を動かし、医院の裏につづいている和風の家屋を斜めから眺めた。医者の住居らしく、そこには灯が映っている。二階はなく、長い家だった。表の医院の建物の倍はありそうだった。
作品分類 小説(中編/シリーズ) 90P×1000=90000
検索キーワード