松本清張_黒の図説 第六話 梅雨と西洋風呂

〔(株)文藝春秋=全集10(1973/05/20)【黒の図説】で第六話として発表〕

題名 黒の図説 第六話 梅雨と西洋風呂
読み クロノズセツ ダイ06ワ バイウトセイヨウブロ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=黒の図説
●全12話
 1.
速力の告発
 2.
分離の時間
 3.
鴎外の碑
 4.
書道教授
 5.
六畳の生涯〔(株)文藝春秋=松本清張全集10〕
   
六畳の生涯〔(株)光文社=生けるパスカル〕
 6.梅雨と西洋風呂
 7.聞かなかった場所
 8.
生けるパスカル
 9.
遠い接近
10.
山の骨
11.
表象詩人
12.
高台の家
●全集(6話)
1.
速力の告発
2.
分離の時間
3.
鴎外の碑
4.
書道教授
5.
六畳の生涯
6.梅雨と西洋風呂
本の題名 松本清張全集 10 黒の図説【蔵書No0041】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/05/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1971年(昭和46年)7月17日号〜12月11日号
書き出し 南側が海で、北側は山の多い県である。海に臨んだ東寄りに人口三十万という水尾市がある。県庁の所在地は山奥の盆地だが人口は二十万に足りない。水尾市が繁盛しているのは、城下町として昔から農村を控えた消費都市であること、近ごろは遠くないところに新興の工業地帯がいくつもできて、その連衡の中心になっていたからである。鐘崎義介の家業は祖父の代からの酒醸造業だった。「寿仙」という酒は、中央でこそ知られてないが、この地方では有名である。義介は次男で、上京して私立大学に入ったころから放蕩をし、大学も一年で中退した。不良の仲間に入ったとか、左翼運動をしていたとか、噂はさまざまだったが、東京での様子はよくわからなかった。義介が水尾市に戻ったのは、兄が死んで家業を嗣ぐことになったからである。そのとき彼は東京で同棲していた女を連れて帰った。水商売関係の女という噂だったが、白粉焼けしたような黒い顔は、なるほどそうかと思われた。いったいに白粉顔で生活していた女は素人になると化粧を落とし、素顔で暮らすのが多い。背格好はすらりとしているが、器量はそれほどのことはなく、無口で、人まえに出ることを嫌った。義介が鐘崎酒造株式会社の社長になったのは、今から二十数年前である。
作品分類 小説(長編/シリーズ) 128P×1000=128000
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