松本清張_聞かなかった場所(【黒の図説】第七話として発表)

〔(株)文藝春秋=全集23(1973/04/20)【聞かなかった場所】として発表〕

題名 聞かなかった場所
読み キカナカッタバショ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=黒の図説
●全12話
 1.
速力の告発
 2.
分離の時間
 3.
鴎外の碑
 4.
書道教授
 5.
六畳の生涯〔(株)文藝春秋=松本清張全集10〕
   
六畳の生涯〔(株)光文社=生けるパスカル〕
 6.
梅雨と西洋風呂
 7.聞かなかった場所
 8.生けるパスカル
 9.
遠い接近
10.
山の骨
11.
表象詩人
12.
高台の家
全集(松本清張全集23 喪失の儀礼・強き蟻)
聞かなかった場所
本の題名 松本清張全集 23 喪失の儀礼・強き蟻【蔵書No0104】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通
初版&購入版.年月日 1974/04/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1970年(昭和45年)12月18日号〜1971年(昭和46年)4月30日号
書き出し 浅井恒雄がそれを知らされたのは出張先の神戸であった。夜の八時半ごろで、食品加工業者の宴会の席だった。浅井は農林省の食料課の係長だが、昨日から局長のお供で来ている。白石という局長はひと月前に他の局から昇進してきた人で、食品行政にはほとんど素人だった。昨日から阪神地方の罐詰め工場やハム工場の視察に回っていて、明日からは広島に向かう予定だ。今夜は業者のお膳立てによる懇親会であった。宴会もそろそろ終わりであった。浅井より三つ年上の局長は、向こう隣にいる業者組合の会長とゴルフの話をしていた。局長はシングルの腕である。囲碁も将棋も実力の初段、マージャンは省内切っての名手であった。浅井は傍にすわって盃を口に運びながら局長の話を神妙な顔つきで聞いている。上司の雑談にも耳を傾けるというのが敬意のあらわれの一つだった。ウイスキーを飲んでいる局長の声は高い。四十五歳で局長だから出世が早いほうである。浅井と違って、東大法科卒の有資格者だった。それに省内派閥の頂上にいる次官に気に入られていた。
作品分類 小説(長編/シリーズ) 117P×1000=117000
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