清張作品ギャラリー

シリーズ作品

 

【死の枝】
作品紹介完結に当たって:素不徒破人


【死の枝】(改題)の作品紹介完結に当たって:素不徒破人
原題:十二の紐


 





【「死の枝」の蛇足的まとめ】

作品名   加害者(殺人犯)  被害者 動機等 
第一話『交通事故死亡1名』  栗野兼雄 吉川昭夫 交通事故を装う計画殺人事件。
共犯の女に新しい男が出来ることにより、計画殺人事件が露見する。
第二話『偽狂人の犯罪』  猿渡卯平 荒磯満太郎 「狂人」になりすますことの難しさが主題なのか?
「偽狂人」を見破る方法が妙に納得させられる。そして、最後はどんでん返し。
第三話『家紋』  真典(住職)? 生田市之助・生田美奈子 小説の中では明確に犯人を揚げていない。
男と女が、連れ添って歩いている光景が映像として浮かぶ。他作品でも時々登場する。
第四話『史擬』  比良直樹 宇津原平助 偶発的殺人事件と、犯行後の犯人の行動は、殺人を犯した犯人の興奮状態が引き起こしたのか
たまたま通りすがった田舎娘の運命を変える。田舎娘の行動も自業自得か?
第五話『年下の男』  大石加津子 星村健治 裏切られた女が、若い夫を殺す。
女の自尊心は、殺人を隠す小細工をするが思わぬ所から破綻する。
第六話『古本』  長府敦治 林田庄平 ネタ本の原作者の孫から強請りたかりをされ、直接手を掛けない方法で殺す。
犯人の長府敦治は、列車の通過時刻の嘘をついた。
第七話『ペルシアの測天儀』  沢田武雄 高林路子(愛人) 愛人に男が出来たことを恨み殺す。ただ、その動機にさほどの意味を持たせていない。
狂言廻しは、アテネ空港の土産品、模造品の「測天儀」と常習窃盗犯の若い男。
第八話『不法建築』  犬を連れた男 水商売の女 変態性欲者の犯行を示唆している。奇妙な結末である。
主題は「不法建築」であり、その取り壊しに焦点が当てられている。
第九話『入り江の記憶』  私(名前はない) 明子(妻の妹) 明子がなぜ殺されなければならなかったが記述されていない。
「私」の記憶の迷宮が犯行を示唆している。妻の共犯も..すべて父母と叔母にまつわる記憶から
第十話『不在宴会』  不明
(魚住一郎ではない)
恵子(バアの女/愛人) 恵子は殺されるが、犯人は魚住一郎ではない。
犯人ではない主人公は、自己保身から逃亡。
第十一話『土偶』  時村勇造 英子(愛人) 殺人は偶発的に起きる。

短編が故に、清張得意の心理描写や動機の深掘りなどが見られない。
テーマの興味深さはさすがである。
十一作品それぞれが、それなりに面白い。
全ての作品に共通するわけではないが、夫婦の微妙な関係が夫に愛人を作らせ、愛人に走らせる。
しかし、土壇場で元の鞘に...妻の座は強しか?『ペルシアの測』・『入江の記憶』で感じられた。
火の記憶』・『潜在光景』・『恩義の紐』や『家紋』にも通じる。

第九話『入り江の記憶』第十話『不在宴会』第十一話『土偶』
では、いずれも女連れ(愛人)で旅行(温泉)

犯人は事件後捜査が進展せず、自身に疑いが向けられなくなり一安心する。
時の経過と犯人の心理は同じなのか...【『不在宴会』『土偶』

読者としては、息抜きにちょうど良い作品群でもある。