松本清張(1022)_恩誼の紐

題名 恩誼の紐
読み オンギノヒモ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)新潮社=宮部みゆき 戦い続けた男の素顔:松本清張傑作選〕
本の題名 火神被殺【蔵書No0005】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/08/15●4版1975/04/05
価格 750
発表雑誌/発表場所 「オール讀物」
作品発表 年月日 1972年(昭和47年)3月号
コードNo 19720300-00000000
書き出し 九歳の記憶だからあやふやである。その家は、崖の下にあった。だから、表通りからは横に入っていた。表通りじたいが坂道になっていて、坂を上りつめたところにガス会社の大きなタンクが二つあった。あるいは三つだったかもしれない。とにかく坂の下から上がってその真黒なタンクがのぞいてくると、ババやんのいる家にきたような気になった。子供の眼には目標で安心があるものである。坂道の両側は品のいいしもたやがならんでいた。その間に酒屋だとか雑貨屋だとか八百屋などがはさまっていた。静かな通りで、人はあまり歩いていなかった。三十年も前のころである。まして中国地方の海岸沿いの町では車もほとんど走っていなかった。角二件が板塀の家で、間のせまい路地を入ってゆくと石段が五つほどあって、その家の玄関になる。玄関は格子戸だったか、硝子戸だったかは忘れた。とにかく庭のあるほうの縁は全部硝子戸になっていた。
作品分類 小説(短編) 30P×700=21000
検索キーワード 9歳児・放蕩の父親・ババやん・ヘラ・雑巾・中国地方・海岸沿いの町・几帳面な妻