原題:十二の紐
題名 | 死の枝 第五話 年下の男 | |
読み | シノエダ ダイ05 トシシタノオトコ | |
原題/改題/副題/備考 | ●シリーズ名=死の枝 (原題=十二の紐) ●全11話=全集(11話) 1.交通事故死亡1名 2.偽狂人の犯罪 3.家紋) 4.史疑 5.年下の男 6.古本 7.ペルシアの測天儀 8.不法建築 9.入江の記憶 10.不在宴会 11.土偶 |
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本の題名 | 松本清張全集 6 球形の荒野・死の枝■【蔵書No0047】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1971/10/20●初版 | |
価格 | 880 | |
発表雑誌/発表場所 | 「小説新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1967年(昭和42年)6月号 | |
コードNo | 19670400-00000000 | |
書き出し | 《或る地方ではめったに殺人事件は起こらないが、起これば迷宮入りになることが多い。これは信仰のため信徒の間に共同防衛意識が強く、聞きこみが困難だからである》と、或る検事総長が体験を語る回想記で述べている。---それはこうした地方の一つであった。事件は報恩講の終わりの晩に起こった。一月十六日である。報恩講は、開祖親鸞の忌日に行なう。東本願寺では陰暦十一月一日から八日までだが、西本願寺では陽暦に改めて一月九日から十六日までとしている。だから、この地方は西本願寺の系統に属しているのだ。近くには、親鸞が北陸路巡錫のとき逗留したゆかりの吉崎御坊がある。その吉崎から東北約三里にFの村があった。近くには、吉崎から起こっている柴山潟もあった。東西に細長い湖だ。その湖に注ぐT川の山間部より平野に出たところがFの村だった。一月十六日のこの地方は寒い。 | |
あらすじ&感想 | 大石加津子は、ある新聞社の電話交換手。独身。 >べつにそれほど器量が悪いというのでもなかった。難を言えば髪と眉毛が薄いことと背が少し低い程度で、十人並みの容貌だった。 小金を貯めて結婚を諦めかけたとき彼女は三十五歳になっていた。老後のためかアパートを経営していた。 「電話」が、キーワードとして登場する作品は数点ある。中でも『声』はそのものズバリ、『交換手』が主人公で、『詩と電話』も、該当すると思う。 その意味でも今作品(年下の男)と『声』と『詩と電話』は、三大作品と言ってよいだろう。 大石加津子に突然恋愛話が降って湧いた。 それは、星村健治 23歳によってもたらされた。 男は、白い丸顔の男、剽軽者の男。彼は、交換台の保全係で男禁制の交換台に出入りしていた。 アパート経営をしていた加津子の空いていた物置部屋が、星村健治の住まいとなる。 加津子は女独りの所帯が物騒だからと理由を付けて、健治を住まわせる。 いつからか物置部屋の三畳の間に住む健治を加津子は、結婚相手と意識する。 歳が違いすぎる。三十五歳の加津子は、年齢より老けてみえた。 >髪はますます薄くなり、眉毛はその描き眉を除ると、まるで江戸時代の女房みたいに剃ったようであった。 >それに近ごろは、中年肥りで身体も大きくなり、それだけ交換台の女ボスとして貫禄をつけていた。 それでも結婚には、加津子なりの理由があった 加津子が二人の中を後輩の同僚に相談した。それは、結婚を決意した後の形式にすぎなかっつた。 相談とはとかくそういうものだ 加津子と健治の結婚 二人の結婚に忠告をする者がいた。 「その時は仕方ないわ。彼には好きなことをさせるつもりよ。わたし、それほど分からない女じゃないわ」 その懸念は意外にも早くきた。 健治に女ができる 交換台の加津子は、電話を簡単に盗聴できた。 その事は健治にも話さなかった。 健治は、交換台が盗聴することまで知らなかった。 加津子は、自分の手で女の電話を健治につないだ。 健治と女の中は、加津子に筒抜けだった 加津子のプライドは、女の存在が明らかになっても決して変わることはなかった。 加津子は女々しくなかった。それ故、破滅へと進んでいくことになる。 加津子は何とかして自分の誇りと体面を傷つけらずに、健治の死亡時期を早めることを考える。 殺人が計画される。 高尾山にピクニックへ誘う。場所を選んでの墜死計画。 小さなトリックがある殺人計画だが、結果として簡単に見破られる。 ここで、ネタバレを戒めて。箇条書きにする。 高尾山へのピクニック 小型カメラで記念写真 加津子は、最後のピクニックで撮影したカメラの処分に困る。 そこには、墜落死した星村健治が写っているからだ。 東京駅の待合室に、見知らぬ顔で置く 常習の置き引き犯が取得する。が、別件で逮捕される カメラは捜査対象になり、製造元、販売小売店が追及される。 カメラ店に立ち寄る、器用な女 ヨウザワメクラチビゴミムシは、高尾山にしかいない昆虫 >偶然にもその刑事は、高尾山のアベックの男が墜死したことを新聞で読んでいた。 2020年12月21日 記 |
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作品分類 | 小説(短編/シリーズ) | 15P×1000=15000 |
検索キーワード | 電話交換手・新聞社・髪と眉毛の薄い女・背の低い女・背の高い男・剽軽者・電気屋・高尾山・アリ・カメラ置き引きの常習犯・墜死 |
登場人物 | |
大石 加津子 | ある新聞社の電話交換手。三十五歳。十人並みの器量だが、髪と眉が薄かった。背が低い。職場の女ボス。年下の男が出来る(星村)。 |
星村 健治 | 白い丸顔の男、剽軽者の男。交換台の保全係で男禁制の交換台に出入りしていた。背が高い(当時として、175センチ) |
刑事 | 常習の置き引き犯が取得したカメラの行方を追及する。偶然にもその刑事は、高尾山のアベックの男が墜死したことを新聞で読んでいた。 |