松本清張_大奥婦女記 第八話 転変

題名 大奥婦女記 第八話 転変
読み オオオクフジョキトウボウ ダイ08ワ テンペン
原題/改題/副題/備考 【同姓同名】
●シリーズ名=大奥婦女記
●全12話=全集(12話)
 1.
乳母将軍
 2.
矢島の局の計算
 3.
京から来た女
 4.
予言僧
 5.
献妻
 6.
女と僧正と犬
 7.
元禄女合戦
 8.転変
 9.絵島・生島
10.
ある寺社奉行の死
11.
米の値段
12.
天保の初もの
本の題名 松本清張全集 29 逃亡・大奥婦女記【蔵書No0014】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/06/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「新婦人」
作品発表 年月日 1955年(昭和30年)10月〜1956年(昭和31年)12月
コードNo 19551000-19561200
書き出し 綱吉には遂に男子の出生がなかった。そればかりか、たった一人娘で紀州家に輿入れした鶴姫も、流行の麻疹で病死した。隆光ははじめ諸僧の加持祈祷も、迷信による生類憐みの法令も、何らの効も無かった。あらゆる手段も今は虚しいものとなった。綱吉も、すでに五十九歳である。もはや、子を得ようとする望みは絶たれた。桂昌院、お伝の方、右衛門佐局、北の丸殿の絶望はもとよりのことだった。この上は、世子として養子をとるほかはなかった。自分の実子に世を譲れないのは残念の極みであるがこればかりは致し方ない。養子をするとなれば、一番身近な者からとるということになる。ここで甲府宰相左馬頭綱豊能線が浮かび上がった。彼は綱吉の従弟であるから、最も血が近いのである。だが、綱吉は元来、この綱豊が好きでなかった。しかし六十近くなった彼は、実子がないとなると、好き嫌いは云っていられなくなった。ようやく老境に入った彼は、早急に世子を決定する必要から、己の感情ばかり云っていられないのである。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 9P×1000=9000
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