松本清張_小説日本芸譚(改題) 第十二話 止利仏師

(原題=日本芸譚)

題名 小説日本芸譚 第十二話 止利仏師
読み ショウセツニホンゲイタン ダイ12ワ トリブツシ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=小説日本芸譚
(原題=日本芸譚)

●全12話
 1.
古田織部
 2.
世阿弥
 3.
千利休
 4.
運慶〔(株)文藝春秋=全集26(第一話)(1973/03/20)〕
   
運慶〔(株)光文社=青春の彷徨〕
 5.
鳥羽僧正
 6.
小堀遠州
 7.
写楽
 8.本阿弥光悦
(光悦)
 9.葛飾北斎
(北斎)
10.
岩佐又兵衛
11.雪舟
12.止利仏師
●全集(全10話)
 1.
運慶
 2.
世阿弥
 3.
千利休
 4.
雪舟
 5.
古田織部
 6.
岩佐又兵衛
 7.
小堀遠州
 8.
光悦
 9.
写楽
10.止利仏師
後記
本の題名 松本清張全集 26 火の縄 小説日本芸譚/私説・日本合戦譚【蔵書No0108】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/03/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「藝術新潮」
作品発表 年月日 1957年(昭和32年)12月号
コードNo 19571200-00000000
書き出し 伊村は締切を明日に控えて、煙草を喫いながらぼんやりしている。前の原稿用紙は一字も書かないで置いてある。灰皿には半分喫った煙草が何本も溜っている。−−そうだ、これに似た書き出しを伊村は以前に芥川龍之介の小説で読んだことがあった。眼の前の書棚にはその全集があるが、とり出すのが億劫で調べて見る気がしない。たしか芥川の小説では、作者の頭に書くべき題材が無くて困っているように書いてあったが、伊村のは今年の初めから決まっていて未だに纏まらないのである。「止利仏師」を書こうと思い立って一年に近い。その間に書く決心をつけながらいつも崩れて了う。何としても出来ない。然し、書くべき義理があるから、遂にぎりぎりの、それも締めきり日が明日という土壇場に追い詰められてしまった。今夜は月食があるので子供が遅くまで外で騒いでいる。伊村もちょっと門まで出てみたが、なるほど月は皆既になっていて赤銅色をしている。月に斑点があるから、見ようによっては古い血が溜まったようだ。こういう現象を見ていると古代人の感じた神秘に心が通うようである。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 9P×1000=9000
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