松本清張_小説日本芸譚(改題) 第四話 運慶

(原題=日本芸譚)

(株)文藝春秋=全集26(1973/03/20):【小説日本芸】第四話〕

題名 小説日本芸譚 第四話 運慶
読み ショウセツニホンゲイタン ダイ04ワ ウンケイ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)光文社=青春の彷徨〕
●シリーズ名=小説日本芸譚
(原題=日本芸譚)

●全12話
 1.
古田織部
 2.
世阿弥
 3.
千利休
 
4.運慶〔(株)文藝春秋=全集26(第一話)(1973/03/20)〕
   
運慶〔(株)光文社=青春の彷徨〕
 5.
鳥羽僧正
 6.
小堀遠州
 7.
写楽
 8.本阿弥光悦
(光悦)
 9.葛飾北斎
(北斎)
10.
岩佐又兵衛
11.
雪舟
12.
止利仏師
●全集(全10話)
 1.運慶
 2.世阿弥
 3.
千利休
 4.
雪舟
 5.
古田織部
 6.
岩佐又兵衛
 7.
小堀遠州
 8.
光悦
 9.
写楽
10.
止利仏師
後記
本の題名 松本清張全集 26 火の縄 小説日本芸譚/私説・日本合戦譚【蔵書No0108】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/03/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「藝術新潮」
作品発表 年月日 1957年(昭和32年)4月号
コードNo 19570400-00000000
書き出し 仏師法印運慶は、京都七条仏所の奥で七十六歳の病んだ身体を横たえていた。貞応二年の春の午下がりである。昼餉には、温糟に茗荷、酸蕗、鶏冠苔の点心が出たが、わずかに梅干しに箸をつけただけであった。食欲がまるでない。潮の干満のように眠気が繰り返して来るだけである。工房の方から絶えず木を挽く音や削る音が聞こえてくる。それにまじって人声がする。一番高いのは息子の定慶の声である。そういう雑音が衰えた耳に一種の懈い調和音となって、眠い意識を心地よく揺すった。うとうとしかけていると、息子の康弁が足音を忍ばすように入ってきた。「お目ざめですか?」と彼は枕もとに寄った。「蓮華王院の宜瑜さんが、お見舞いにお見えです。お通ししすか?」その小声に運慶はうなずいた。宜瑜なら不快な相手ではない。眠気が去りかけると、人の話が欲しい気がした。運慶は衾の中で体を動かした。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 12P×1000=12000
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