松本清張_小説日本芸譚(改題) 第七話 写楽

(原題=日本芸譚)

題名 小説日本芸譚 第七話 写楽
読み ショウセツニホンゲイタン ダイ07ワ シャラク
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=小説日本芸譚
(原題=日本芸譚)

●全12話
 1.
古田織部
 2.
世阿弥
 3.
千利休
 4.
運慶〔(株)文藝春秋=全集26(第一話)(1973/03/20)〕
   
運慶〔(株)光文社=青春の彷徨〕
 5.
鳥羽僧正
 6.
小堀遠州
 7.写楽
 8.本阿弥光悦(光悦)
 9.葛飾北斎
(北斎)
10.
岩佐又兵衛
11.
雪舟
12.
止利仏師
●全集(全10話)
 1.
運慶
 2.
世阿弥
 3.
千利休
 4.
雪舟
 5.
古田織部
 6.
岩佐又兵衛
 7.
小堀遠州
 8.
光悦
 9.写楽
10.止利仏師
後記
本の題名 松本清張全集 26 火の縄 小説日本芸譚/私説・日本合戦譚【蔵書No0108】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/03/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「藝術新潮」
作品発表 年月日 1957年(昭和32年)7月号
コードNo 19570700-00000000
書き出し 寛政七年正月の半ば、午下がりであった。寒い日である。東州斎写楽は、鼻の頭を赤くしながら、八丁堀の自宅を出て弾正橋を北に渡った。堀割の水が凍えそうな色をし、霰が落ちていた。堀割に沿って真直ぐすすむと、南伝馬町になる。それを東に曲がるところで写楽は、ちょっと足が怯んだ。角は辻番である。その隣が絵草紙屋であった。大錦絵、大判、間判、長判、小判などが、一枚もの、二枚続き、三枚続きにわけて雑然と店さきにならべられてあった。店の奥は暗くて往来からは覗けない。が、それを後に背負って、前屈みの親爺がいつも銀煙管を咬えて端然と座っていた。いや、端然というのは写楽の見た形容だが、親爺は火鉢を抱いてあぐらをくんでいるのかもしれない。ただ、彼はいつも眼を店先に向けて、ついぞ顔を横に向けていたのを見たことがない。それは絵草紙を択っている女客のてもとを監視しているときでも、客がなくてぼんやり往来を眺めているときでも、親爺は表を通る写楽を視界に捕らえるために意地悪く構えているように思われた。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 11P×1000=11000
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