松本清張_無宿人別帳 第九話 赤猫

〔(株)文藝春秋=全集24(1972/10/20)〕 【無宿人別帳】で第八話として発表〕

題名 無宿人別帳 第九話 赤猫
読み ムシュクニンベツチョウ ダイ09ワ アカネコ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=無宿人別帳
備考=冒頭、〔折りたく柴の記〕を引用
●全12話
 1.町の島帰り
 2.海嘯
 3.
おのれの顔
 4.
逃亡
 5.
俺は知らない
 6.
夜の足音
 7.
流人騒ぎ
 8.
抜け舟(未購入)
 
9.赤猫
10.
左の腕
11.
なかま(未購入)
12.
雨と川の音
●全集(全10話)
 1.町の島帰り
 2.海嘯
 3.
おのれの顔
 4.
逃亡
 5.
俺は知らない
 6.
夜の足音
 7.
流人騒ぎ
 
8.赤猫
 9.
左の腕
10.
雨と川の音
本の題名 松本清張全集 24 無宿人別帳・彩色江戸切絵図/紅刷り江戸噂【蔵書No0134】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1972/10/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「オール讀物」
作品発表 年月日 1958年(昭和33年)5月号
コードNo 19580500-00000000
書き出し 正徳五年の晦日の夜、呉服橋内の本多中務大輔の邸から発した火は、鍛冶橋、山下門内の大名小路の邸を数町焼いて、京橋山下町、木挽町、芝口辺りまで延びた。方々で鳴らす半鐘の音は、無論、伝馬町の牢内にも聞こえた。夜中だったが、科人どもは全部が起きて、鞘の格子にとりついて耳をすませた。「摺り番だ。火は近え」と眼を輝かせて声を上げる者がいた。「こりゃ大きそうだぜ」と呼ぶ者がいる。皆の顔に露骨に喜びが出ていた。「だんな、ご牢の屋根は、火の粉をかぶっていませんかね?」と牢屋鎰番に催促するように云う者もいて、口々に騒いだ。−−明暦三年の江戸大火のとき、この伝馬町の牢屋敷が焼けたことがある。その際、奉行石出帯刀の判断で、牢内の囚人一同を一時釈放した。汝らを焼くに忍びないから、火が鎮まったら必ず下谷蓮慶寺へ来て集まれ。この約束を違えずに来た者は、自分の身に替えても、汝らの命を助けるであろうといった。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 17P×1000=17000
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