研究室_蛇足的研究

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2006年10月8日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_031

 【不法建築(死の枝・第8話)


研究発表=No 031

【不法建築(死の枝・第8話)1967年9月 〔小説新潮〕

東京R区役所の建築課監察係は、係長以下五人しかいなかった。監察係というのは、違反建築物を取り締まるところである。......◎蔵書◎松本清張全集 6 球形の荒野・死の枝(株)文藝春秋●1971/10/20/初版より

東京R区役所の建築課監察係は、係長以下五人しかいなかった。監察係というのは、違反建築物を取り締まるところである。最近、地価の暴騰と人口の稠密で都内は違反建築物が増加している。殊に、面積に対して四割に建蔽率しか認めない地域では、それがひどく目立つ。緑地帯の環境保持も何もあったものではなかった。人家の多い下町では、キャバレー、料理屋、工場、百貨店などの違反建築が見られるが、R地区は以前から閑静な住宅地が多く、その大半が四割の建蔽率区域になっている。建築基準法は、用地地域の設定による地域の環境保持と併せて、建築物の防災上、衛生上の基準を定めている。ところが、最近は建売住宅なるものが増加してきた。わずかな土地に建築規制などまるで無視した建坪の家を建てる。ほとんどが総二階だ。そして隣との距離は一メートルもなく人間がやっと通れる程度である。ひどいのになると、棺桶が運び出せないという悲劇が起こっている。

研究

耐震偽装で建築確認などが問題となったのはこの一二年である。
不法建築は、建てた者勝ち的なところがあって、いまもたくさんあるらしい。
最近は建売住宅なるものが増加してきた。」とあるが、この作品は1967年である。
高度経済成長期のまっただ中の頃である。
棺桶が運び出せないという悲劇が起こっている。」事件を予測させるキーワードか?
作品的には建築に絡む汚職事件を予測させる。

※高度経済成長期=日本経済が飛躍的に成長を遂げた1950年代半ばから
             1970年代初頭までの経済成長を指す。

経済成長の背景で環境破壊が起こり、「水俣病」や「イタイイタイ病」、「四日市喘息」といった公害病の発生、大量生産の裏返しとしてのゴミ問題などの公害の問題が深刻化した。これは、何よりも国民が環境よりも経済成長を優先した結果であるといえる。高度経済成長期後半になると公害による死者が増え、自分の身にかかわるとなると公害に対する起訴が急激に増えてきた。また、都市への人口集中による過密問題の発生と、地方からの人口流出による過疎問題が発生した。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

連作、シリーズものの「死の枝」で1.交通事故死亡1名 2.偽狂人の犯罪 3.家紋
 4.史疑 5.年下の男 6.古本 7.ペルシャの測天儀 8.不法建築 9.入江の記憶
10.
不在宴会11.土偶の全11話の第8話である。題でみるかぎり、関連性はないようだ。