清張作品ギャラリー

シリーズ作品

 

【草の径】
作品紹介完結に当たって:素不徒破人


【草の径】の作品紹介完結に当たって:素不徒破人


シリーズ作品「草の径」は、清張最晩年の作品です。
発表時から単行本に収録されるまでに紆余曲折があったように見受けられる。
発表は、「月刊 文藝春秋」で、1990年(平成2年)1月号から始まっている。
1990年(平成2年)1月号=「削除の復元」
1990年(平成2年)4月号=「ネッカー川の影」
1990年(平成2年)5月号=「死者の網膜犯人像」(原題:死者の眼の犯人像)
1990年(平成2年)6月号=「「隠り人」日記妙」
1990年(平成2年)8月号=「モーツアルトの伯楽」
1990年(平成2年)11月号=「呪術の渦巻き文様」(原題:無限の渦巻き文様)
1990年(平成2年)12月号〜1991年(平成3年)1月号=「老公」
1991年(平成3年)2月号=「夜が怖い」
何れも短編であるが、以上の通り順次発表されている。(必ずしも毎月発表された訳では無いようだ)

1991年に文藝春秋社から単行本「草の径」が、出版されている。(私は3版を蔵書/初版は1991年)

●作品発表時の順番●
1990年4月〜1991年1月 連載 1991年8月 出版 1996年3月 出版
月刊文藝春秋連載

1.ネッカー川の影
2.死者の眼の犯人像改題=死者の網膜犯人像
3.「隠り人」日記抄
4.モーツアルトの伯楽
5.無限の渦巻文様改題=呪術の渦巻文様
6.老公
7.夜が怕い

※順番は発表当時の順
●単行本・文藝春秋【草の径】(全7話)

第一話『ネッカー川の影』
第二話『死者の網膜犯人像』
第三話『「隠り人」日記抄』
第四話『モーツアルトの伯楽』
第五話『呪術の渦巻き文様」
第六話『老公』
第七話『夜が怕い』 



そもそも、「削除の復元」は、シリーズ作品【草の径】では
ない。月刊文藝春秋で連載が始まり、1990年の1月に
「削除の復元」が発表された。
以後、4月から順次発表された作品が、シリーズ作品
【草の径】とされるものだった。
●全集66【草の径】(全7話)

1.老公
2.モーツアルトの伯楽
3.死者の網膜犯人像
4.ネッカー川の影
5.「隠り人」日記抄
6.呪術の渦巻文様
7.夜が怕い


【草の径】(文藝春秋社)の単行本から、松本清張全集66でなぜか順番が変わっている。
短編のシリーズ作品だが、老公・モーツアルトが比較的長い作品である事くらいが特徴的と言える。
「モーツアルトの伯楽」・「ネッカー川の影」・「呪術の渦巻き文様」が、ヨーロッパでの取材旅行の成果と思える作品。
「江戸綺談 甲州霊獄党」(1992年1月2日〜5月15日)が最後の作品と言われるが、未完です。
「夜が怕い」は、完結した最後の作品と言える。
この作品は清張の自叙伝的な作品とも言われる、「暗線」にうり二つである。
二番煎じと言えるが、清張の「焔文様」かもしれない。
作品の内容には統一性は感じられない。
無理矢理関連付ければ、清張氏の永遠のテーマなのかもしれない。
古代史・昭和史・父の生涯・未知なる物への興味。
寿命を意識してもなお湧き上がる創作への意欲

それにしても、【草の径】としてまとめられた意味が理解出来ない。


 『わが力なきをあきらめしが、されど草の葉で綴る焔文様』 

【草の径】や、全集66「老公」・【草の径】の項の表紙とも言えるページに、上記の一文がある。
「短歌」なのだろうか?
無学・浅薄な私は、この意味が理解出来ない。
当てずっぽうで解釈すれば
もはや、能力の限界・寿命を感じつつある。それでも執念で最後に燃えさかる思いを綴られずにはいられない。


(蛇足的まとめでした)


【追記】2025/09/22
手落ちでした。【草の径】の単行本の腰巻き(帯)を完全に見落としていました。
帯は、以下の通り。
私の考察もあながち遠からずで安心した。




作品名   作品の特徴  キーワード
第一話『ネッカー川の影』 短編(28350)・舞台は、ドイツ・純文学的 純文学・ドイツ・テュービンゲン・ヘルダーリン塔・画家・先史学・留学生・愛妻家・
税理士・夫婦関係・目黒・祐天寺・妊婦 
第二話『死者の網膜犯人像』 短編(13230)・未知への興味・推理小説 殺人事件・市ヶ谷・第一発見者・後妻・ポメラニアン・網膜・残像・
犬の顔・注射・ホルマリン液

第三話『「隠り人」日記抄』 短編(28350)・昭和史発掘 スパイM・松村・共産党幹部・特高の手先・隠遁生活・ヒモ・内縁の妻・
料亭・ひさご亭・偽名・転向・借金地獄・家賃の値上げ

第四話『モーツアルトの伯楽』 短編(39060)・舞台はウイーン 東京から来た男・通訳の女・音楽家のタマゴ・デンスケ(録音機)・マイク・ウイーン・サンクトマルクス
・フリーメーソン・梅毒・水銀・墓・汗牛充棟

第五話『呪術の渦巻き文様』 短編(20790)・舞台はアイルランド アイルランド・ダブリン・空港ロビー・旅行社・画家・爬虫類・渦巻き文様
直弧文・兄妹・銀行・証券会社・精神病院・狂人・独身
第六話『老公』 短編(38430)・近・現代史 古書の「「西園寺公爵警備沿革史」を巡っての話しのようだ。
第七話『夜が怕い』 短篇(17010)・自叙伝的、父への思い 胃潰瘍・癌・入院・病院・看護婦・付添・父・里子・家出・砂鉄・たたら鉄・4人の息子・小さい耳・夜道

※作品の長さの数字は、文字数だが概略の数字(●短編:文字数=50000以下●中編:
文字数=50001〜100000●長編:文字数=100001以上)




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