松本清張(1066)大奥婦女記 第四話 予言僧

題名 大奥婦女記 第四話 予言僧
読み オオオクフジョキトウボウ ダイ04ワ ヨゲンソウ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=大奥婦女記
●全12話=全集(12話)
 1.
乳母将軍
 2.
矢島の局の計算
 3.
京から来た女
 
4.予言僧
 5.
献妻
 6.
女と僧正と犬
 7.
元禄女合戦
 8.
転変
 9.
絵島・生島
10.
ある寺社奉行の死
11.
米の値段
12.
天保の初もの
本の題名 松本清張全集 29 逃亡・大奥婦女記【蔵書No0014】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/06/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「新婦人」
作品発表 年月日 1955年(昭和30年)10月〜1956年(昭和31年)12月
コードNo 19551000-19561200
書き出し 晴れた秋の日、おだやかな陽射しが京の仁和寺の境内にひろがっている。睡くなるような懶いあかるさである。お玉は母と一しょに歩いていた。幼い彼女にも、そとの明るさから急に暗いお堂の中に入ったので、夜のように足もとが見えなかった。気付けてや、危いえ、と母がきれいな京訛で注意して手を引いてくれた。それから明るい座敷に座っていた。母が若い僧と話をしていた。出された茶菓子をお玉はたべていた。その僧が、ふとお玉の方を向いて、おいでおいでをした。眉の濃い、唇の赤い青年の伴僧であった。お玉は少し怕いと思ったが、母が微笑しているので、思い切ってすすんだ。僧はお玉の顔を近々と穴のあくほど見つめた。その鋭い眼の光りにお玉はまた怕くなった。若い僧はお玉の頭を撫でてから、母に向かっていった。「私はこの頃、人の相を見ることを習っていますが、いまお嬢さんをの顔を見ると、まことに不思議なことがあるものです。この相は後々には威勢天下にならぶもののない、申さば将軍の母君ともなられる吉兆が見うけられます。しかし、町家の八百屋のお子さんがそのような身分になられるわけはないから、わたくしの占いの勉強が至らぬ故かも知れません。が、どうも不思議です。わたくしには見れば見るほどそう映るのですが」若い僧はしきりと首を傾けていた。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 9P×1000=9000
検索キーワード 仁和寺.京訛.八百屋の娘.人相.行儀見習い.大奥.跡継ぎ.綱吉.桂昌院.入仏供養.護国寺人の好悪