松本清張_大奥婦女記 第一話 乳母将軍

題名 大奥婦女記 第一話 乳母将軍
読み オオオクフジョキトウボウ ダイ01ワ ウバショウグン
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=大奥婦女記
●全12話=全集(12話)
 1.乳母将軍
 2.矢島の局の計算
 3.
京から来た女
 4.
予言僧
 5.
献妻
 6.
女と僧正と犬
 7.
元禄女合戦
 8.
転変
 9.
絵島・生島
10.
ある寺社奉行の死
11.
米の値段
12.
天保の初もの
本の題名 松本清張全集 29 逃亡・大奥婦女記【蔵書No0014】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/06/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「新婦人」
作品発表 年月日 1955年(昭和30年)10月〜1956年(昭和31年)12月
コードNo 19551000-19561200
書き出し お福が竹千代の乳母になったのは二十六の歳であった。竹千代は徳川二代将軍秀忠の長子である。家康は駿府城ではじめてお福を引見したとき、「そちは亭主と何ゆえ別れたのじゃ?」と訊いた。お福は頭を下げたままだったが、少しもわるびれない声で、「稲葉に不埒な所業がござりましたゆえ」と答えた。十五人の妾をもっている家康は苦笑した。お福の亭主稲葉正成はもと小早川家の臣であったが故あって浪人していた。その生活の中で女中に手をかけた。お福はそれを知って怒り、正成の哀願もきき入れず四つの子と生まれたばかりの嬰児を置いて婚家先をとび出したのであった。家康は退ってゆくお福の姿を見送って、傍に控えている執事の本多上野の介正純に、「あれ見たか。強い眼をもった女子じゃ。さすがは斉藤内蔵助の女ほどあるわ。竹が乳母には又とあるまい」と満足そうに云った。竹とは孫竹千代のことである。
作品分類 小説(短編・時代/シリーズ) 9P×1000=9000
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