その
十五
 

その
十五

清張作品の題名は「黒の...」とか「霧の旗」・「波の塔」など「の」が多く使われている。

ぼんやり題名の特徴などを考えていたと、きその特徴を整理してみようと思い立った。

まさに蛇足的考察である!


(第三部).

その十五 21/07/21 (蒼のある断層・蒼い描点・蒼ざめた礼服)
短編:【蒼のある断層【オール讀物】(1955年(昭和30年)11月号)
長編:【蒼い描点【週刊明星】(1958年(昭和33年)7月27日号〜1959年(昭和34年)8月30日号)
長編:【蒼ざめた礼服【サンデー毎日】(1961年(昭和36年)1月1日号〜1962年(昭和37年)3月25日号)

色のタイトルは、イロイロある。
【●色/赤.白.黄色

蒼は青にあらず
「蒼」:深い青色。緑がかった青い色。



【青】
青春の彷徨」(原題:死神)「週刊朝日別冊」・時代小説傑作集1953年(昭和28年)6月
壁の青草」(原題:少年受刑者)「新潮」1966年(昭和41年)5月号


●書き出しに登場する【蒼】(12作品)

@『中央流沙
>眩しい広間の床の前には、三十七,八ばかりの、顔の
い男が座っていた。

A影の車 第三話 『薄化粧の男
>夜明けの光が雑木林の向うにく射している。あたりはまだうす暗かった。

B黒い画集 第七話 『凶器
>冬の午前七時といえば、陽がまだ霧の上に出ないい朝である。

C『河西電気出張所
>係員はい顔をしている信一を窓口からのぞき、手もとの薄い書類綴を繰った。

D『脱出
>神経質で、顎が尖って、いつもい顔をしている。もとから気鬱症だったが、だんだんひどくなった。

E『西街道談綺 五
い顔をして思案にふけっている。その目は据わっていた。

F『黒い福音
>広い畠と、その向こうに立っている林とが褪めて黝み、端には白い夕靄がたつ。

G無宿人別帳 第四話 『逃亡
>宗七はい顔をして三日ばかり寝込んだ。それを叩き起こして坑内に追い込んだのは、鉱山の地役人である。

H『群疑
>彼は途上で変を聞くと、惶として伊賀、伊勢の間道を潜行して領国三河に遁げ帰った。

I『眼の壁
>窓から射す光線は弱くなり、空には黄昏のさが妙に澄んでいる。

J『火の路(下)
>窓の外は俯瞰が消えて白い雲とい空だけになっていた。

K『市長死す
>いつも定宿にしている目黒の
蒼海ホテルに六日間滞在して、..

殆どが、顔色、景色の色だが、ひとつだけ、ホテルの名前で登場している。
12作品中、5作品が「


題名としての「蒼」は多くはないが、清張の好きな色と言える。



2021年07月21日記