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【紅刷り江戸噂】
作品紹介完結に当たって:素不徒破人


【紅刷り江戸噂】の作品紹介完結に当たって:素不徒破人

好色な男女が登場する。
発表雑誌が、月刊誌の「小説現代」
男性読者が主流だと思われるので、それを意識して書かれているようだ。
『役者絵』だけが、「別冊 宝石」で発表されています。
『術』は、色合いの違いを感じる作品では無いかと思います。
『突風』には、岡っ引きは登場しませんが、悪党どもが欲に絡んで自滅します。
岡っ引きの役回りを悪党がしています。(「同姓同名」の作品がある)

謎解きのため岡っ引きがいろいろ登場しますが、【文吾】が、『虎』と『見世物師』に登場します。
作中ではハッキリ書いてはいませんが、設定から同一人物のようです。神田の岡っ引きです。

落語にネタがあるように感じた作品が、「見世物師」・「術」・「役者絵」など
化け物使い・一眼国・ろくろ首・ガマの油売り等の落語を想起させます。

一般的な推理小説とは違い、謎解きと云うより、捕物帖的な「時代劇」を愉しむことの出来る作品群で
気軽に読むことが出来ます。

中でも、『術』は、結末の展開が如何にも清張的で好きな作品に上げることが出来ます。

作品名   舞台・岡っ引き  作品のキーワード&作品紹介
第一話『七草粥』 関東織物の問屋
大津屋庄兵衛
お千勢
岡っ引き=文七
手下:亀五郎
なずな売り・若い後妻・手代との仲・好色な内儀・食中毒・トリカブト・岡っ引き・関東織物・世話焼き女房・嫉妬 
大店の若い後妻は好色だった。女房のいる手代と仲良くなる。手代が悪党で悪知恵を働かせるが策に溺れる。岡っ引きの文七は腕利きだった。  
第二話『虎』 皐月屋という鯉幟製造の
旧い問屋平兵衛

神田の岡っ引き
岡っ引き=文吾
鯉幟・渡り職人・張子の虎・町医者・男色・身代・人形屋・好色・火事・岡っ引き・笹子峠
渡り職人の与助はお梅を殺して江戸へ出る。男色町医者了庵へ添う。了庵の身代を得た与助は...
男色の世界。前編と後編で一転する。岡っ引きの文吾は『見世物師』でも登場する。
同一人物のようだ。神田の岡っ引き。
第三話『突風』
同姓同名アリ
菱屋の内儀
お綱

※岡っ引きは出てこない
菱屋・内儀・手代・秋葉権現・祭・遊山舟・転覆・身元不明の遺体・香具師・悪党の悪知恵・信州・強請・共犯者・仲間割れ
大店の後妻は品川から来たらしい。好色で手代と遊山舟の転覆で後妻の内儀だけが助かる。
手代を見捨てて、何食わぬ顔で店に帰る。
舟事故で助けられたが、所も名もなのら事を疑問に思った香具師の善助に強請られることになる。
善助は友達の才次を誘い内儀のお綱を強請る。
悪党どもは、悪知恵の結果墓穴を掘る。共犯者の約束など、何の役にも立たない。
突風は舟事故だけではなく悪党どもの人生も吹き飛ばす。
第四話『見世物師』 見世物小屋
八兵衛
源八・庄太

岡っ引き=文吾
蛇使い・一本足・ろくろ首・大鮑・豊虎・大狼・湯文字・けころ・瓦版屋・嫉妬・同業者・神田の岡っ引き・文吾
兄弟分か、師弟関係か?同業者の嫉妬は見世物の勝負では無く殺人にまで発展する。
岡っ引きは策を弄して、見世物に仕掛けをする。下手人だけが知り得る品が彼らの前に現れる。
犯人は死体を確かめる事で安心を得ようとする。
犯罪者の心理はいつの時代でも同じだ。腕利きの岡っ引きの策略にはまってしまう。
犯人は殺人現場に戻る。『虎』に出てくる岡っ引きの文吾は同一人物か?
第五話『術』 木賃宿
広小路
葉村庄兵衛

岡っ引き=忠七
他の岡っ引き:粂蔵・定吉・
木賃宿・居合抜き・大道芸・西国・浪人・広小路・イカサマ・首切り・女の被害者・出奔・岡っ引き 
西国から流れてきたであろう浪人の葉村庄兵衛は居合抜きの達人でもあった。
大道で「術」を見せながら粉薬を売っていた。
彼は暗い過去を背負っている雰囲気を持たせながら、浪人に身を落としてはいるが筋が通っていた。合抜きさんと木賃宿で慕われていた。しかし暗い影は隠せなかった。
首切り事件の謎解きを岡っ引きの忠七とするが、謎解きを終えた浪人は行方をくらます。
第六話『役者絵』 袋物問屋大津屋
大津屋六兵衛・お蝶

岡っ引き=文五郎
手下:仙八・寅吉
お灸・浄応寺・下駄の雪・鎌倉河岸・袋物問屋・屏風・行燈・囲われ者・葭町・無宿人・酒飲み・祝い酒・岡っ引き
役者絵は下手人逮捕に一役買う。女を囲っている美濃屋六兵衛は、集金帰りに立ち寄る時を狙われて殺される。女が怪しい。女が一人で出来る仕業ではなかった。手伝った男がいるはずだ。男の姿を掴むことの出来ない岡っ引きは、行動の怪しい不良をかったっ端から調べ上げる。
当人達は誰も知らないと思っているが、関係があるから事件が起きているのだ。
女の家で見た「役者絵」は、岡っ引きに一芝居を思いつかせる。
手下を使っての段取りは劇的な結末を迎える。
女の口車に乗って殺人計画が実行される。誰も知らないはずの関係は、岡っ引きの勘から結びついていく。女の好きな役者絵は、岡っ引きの策略で男の隙に入り込み墓穴を掘ることになる。