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事件です!!/「実録風小説?」

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清張作品の題名は「黒の...」とか「霧の旗」・「波の塔」など「の」が多く使われている。

ぼんやり題名の特徴などを考えていたと、きその特徴を整理してみようと思い立った。

まさに蛇足的考察である!


No010 05/03/25 ●事件です!!  「○○事件」ってけっこうありました

実録風小説は
理論課程をたのしむ!
とりあえず年代順に並べてみた。各年代に平均して書かれている。

明治金沢事件」  1956年(昭和31年)「サンデー毎日」新春読物小説号

日光中宮祠事件」1958年(昭和33年)「別冊週刊朝日」

小説帝銀事件」 1959年(昭和34年)「文藝春秋」

高校殺人事件」  1959年(昭和34年) (原題=赤い月) 「高校上級コース」/雑誌名変更「高校コース」

夏夜の連続殺人事件」1968年(昭和43年) 「週刊読売」(未購入)(【ミステリーの系譜】第五話)

新開地の事件」  1969年(昭和44年) 「オール読み物」

アムステルダム運河殺人事件「週刊朝日カラー別冊T」

セント・アンドリュースの事件」1969年(昭和44年)「週刊朝日カラー別冊V」(原題=セント・アンドリュースの殺人)

留守宅の事件」1971年(昭和46年)5月号「小説現代」

神の里事件」 1971年(昭和46年)8月号「オール讀物」

小説 3億円事件「米国保険会社内調査報告書」」1975年(昭和50年)「週刊朝日」

最初から「事件」となっているだけに、当然事件があるし、起きる。

オリジナルとして小説の題として付けたものと、実際の事件を題材にしたものと、二通りあるようだ。

オリジナルとしては、「
高校殺人事件」・「夏夜の連続殺人事件」・「新開地の事件」・「留守宅の事件」・「神の里事件

実際の事件を題材にしたものとしては、

明治金沢事件」・ 「日光中宮祠事件」・「アムステルダム運河殺人事件」・「小説帝銀事件」・

小説 3億円事件「米国保険会社内調査報告書」」が、そうであろう。

ただ「
セント・アンドリュースの事件」だけがよく解らない。

「事件」は題材として利用されているが、「実録風小説?」で、あくまでも小説である。

実際の事件を知っていると、リアリティがありおもしろい。

「事件の解決に対する興味よりも、その解決にいたるまでの
理論課程をたのしむにあるという意見
(長沼弘毅説)に賛成したい。」<参考=松本清張事典>に
賛成だ。

したがって、『最初から「事件」となっているだけに、当然事件があるし、起きる。』が、

「その解決にいたるまでの
理論課程をたのしむにある」ので、最後まで楽しむことが出来る。

小説 3億円事件「米国保険会社内調査報告書」」なんて、現実と小説が混乱して、

そういうことだったのかと納得してしまいそうである。

小説以外でも「事件」のタイトルは多い。
たとえば、「
昭和史発掘」(『朴烈大逆事件』『「満州某重大事件」』『天理研究会事件』)などである。

最後に「実録風小説?」の限界を
本多勝一氏が批判している。

氏は清張氏に対して尊敬を込めて(「最も尊敬するごく少数」の一人)であるが、

>ノンフィクションというジャンルから松本清張氏を見ると、現在の権力側・体制側が決して忌避しない
>「ノンフィクション=ライター」の偉大な元祖だったたということができよう。
>だからこそ「JCIAそのものと言うべき文春」(『噂の真相』一九九二年八月号二五ページから)
>からも忌避されることなく全集等が刊行されてきたのであろう。(本多勝一著・貧困なる精神K集より)

2005年03月25日記