(原題=赤い月)
題名 | 高校殺人事件 | |
読み | コウコウサツジンジケン | |
原題/改題/副題/備考 | (原題=赤い月) | |
本の題名 | 高校殺人事件■【蔵書No0038】 | |
出版社 | (株)光文社 | |
本のサイズ | 新書(KAPPANOVELS) | |
初版&購入版.年月日 | 1961/12/10●131版1976/10/01 | |
価格 | 580 | |
発表雑誌/発表場所 | 「高校上級コース」/雑誌名変更「高校コース」 | |
作品発表 年月日 | 1959年(昭和34年)11月号〜1961年(昭和36年)3月号 | |
コードNo | 19591100-19610300 | |
書き出し | 高等学校は城山にあった。城山といっても、べつに石垣があるわけではない。武蔵野台地の一画で、普通の小さな丘であった。クヌギ、ケヤキ、カシなどの雑木が密生している。城跡だといわれると、丘の下に空濠の跡が溝のようについていて、わずかにそれだと知られるくらいであった。戦国時代、小田原北条がたの豪族がここに小城を築いていたということだった。この城跡の下には、享光院という寺になっている。由緒ある寺だが、今は荒廃して、めったに参詣人がない。もっとも、交通の便利が悪い。中央線の駅まで都心から一時間半ぐらいかかるが、その駅からバスで五十分ぐらい要する。バスも回数が少ない。バスを降りて、田舎道を二十分ぐらい歩かねばならなぬから、都心からの参詣人がないのも当然だった。しかし、まるきり訪う人がいないか、といえばそうではない。ときたま、四、五人連れの人が寺のまわりをゆっくり歩いているのを見かけることがった。彼らは、手帳を出して、何か案じ顔に首をかしげては、鉛筆をなめていた。多くは年輩者だった。つまり、彼らは俳人であった。 | |
あらすじ&感想 | 1959年の作品である。言葉使い、作品のテーマ、当時の高校生の生活。 それを考慮して読まなければならない。 グループの中心人物である、ノッポと呼ばれる小西重介が朴歯の下駄を履いて登場する。 彼は、ボードレ-ルへ傾倒している。 彼の詩が小説の中に「登場」するが、もちろん清張のオリジナルであろう。その評価は?、わからない。 武蔵野台地の一角にある高校の近くに、享光院という寺がある。 彼は、享光院の裏の沼で殺される。ある晩、沼で聞いた笛の音の正体を、突き止めようとしたのであった。 高校の英語の先生中村も行方不明になる。 郷土館が建てられ、享光院一帯が観光化される。寺の倉田住職が館長になる。 防空壕から、享光院あたりを眺めていた浮浪者風の男、岩村国夫は郷土館の管理人になる。 彼の行動は、伏線の重要な役目を果たす。 その後、首つり自殺をする。この、岩村国夫は実は、横武龍一であった。 そして、自殺ではなく殺されたのであった。 犯罪のテーマが、戦時中の軍の物資隠匿である。旧軍隊の暗闘が伏線である。 事件は後半に一気に解決する。 私である羽島謙のいとこの、羽島 さち子が登場して名探偵ぶりを発揮する。 寺の坊さんである良念が、随所で登場するが小説に中での彼の役目が今ひとつはっきりしない。 私として登場する羽島の名前がなかなか出てこない。 「謙ちゃん」と、さち子が呼んで初めて「謙」と解るが、「謙治」かもしれない。 友人の柳田、中島、山口も名前がない。女の子は名前がある。 最後の謎解きで、岩村が横武で、本当の岩村が登場するが、前半で描かれた横武である岩村の印象が 強くて、混同してしまう。 高校生向けに書かれた作品らしい展開は、それなりにおもしろい。 「高校生向け」と、したが具体的に指摘できる根拠はない。ただ、前半は、江戸川乱歩というか横溝正史的 というか、そして、後半の名探偵さち子の登場が、そんな気がする根拠といえるだろう。 2005年09月30日 記 |
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作品分類 | 小説(長編) | 272P×430=116960 |
検索キーワード | 武蔵野台・城跡・詩人・沼の底・武古郷土館・若い坊さん・いとこ・享光院・和尚・財宝・横穴・兵隊・防空壕・隠匿物資 | |
【カバー】武蔵野台地の一画、多摩川の流れを見おろす、かつての城あとに、私たちの高等学校はあった。高校三年の私たちグループの一員で、ポーの心酔者である詩人ノッポが、学校の裏の沼で無惨な死にかたをしたのは、沼のほとりに蛙やいもりの出没する晩春のことである。彼は闇の中から流れてくる妖しい笛の音に魅せられて、人気のない深夜の沼にはいっていったという・・・・・・。 |
登場人物 | |
柳田 | 羽島謙の友人。 いつも主席をつづけている。 |
中島 | 羽島謙の友人。 |
山口 | 羽島謙の友人。 |
小西 重介 | 羽島謙の友人。グループの中心人物。「ノッポ」。身長1メートル80近く。 |
坂本 信子 | 羽島謙の友人。推理小説好き。「ノンちゃん」。家は喫茶店 |
手島 加奈枝 | 羽島謙の友人。普段はおとなしい |
羽島 謙 | 私。この小説の案内人。 |
羽島 さち子 | 羽島謙のいとこ。九州在住。私と小学校2年の頃までよく遊んだ。名探偵 |
中村先生 | 学級担任、英語の教師。27,8歳。大学卒業後すぐ赴任、4年目。 |
良念 | 享光院の坊さん。25,6歳。面長の顔立ち。丈夫そうな体格 |
倉田 春恵 | 享光院の住職。痩せている。60くらいに見えるが、51歳。 |
横武 龍一 | 人夫ふうの男。龍。岩村国夫を名乗り「武古郷土館」の管理人になる。ある部隊の伍長 |
石野 丈吉 | 東日交通(株)の社長。「武古郷土館」を建設する。岩村国夫に利用されただけ。 |
岩村 国夫 | 軍曹。横武龍一に岩村国夫を名乗らせる。 |