松本清張_思託と元開

松本清張短篇小説館(1/5話)〕

題名 思託と元開
読み シタクトゲンカイ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=松本清張短篇小説館
●全5話
1.「松本清張短篇小説館 思託と元開(全5話 1/5)※【松本清張全集66】
2.「
松本清張短篇小説館 南半球の倒三角」(全5話 2/5)※【名札のない荷物】
3.「
松本清張短篇小説館 信号」(全5話 3/5)※【途上 松本清張初文庫化作品集B】
4.「
松本清張短篇小説館 老十九年の推歩」(全5話 4/5)※【途上 松本清張初文庫化作品集B】
5.「
松本清張短篇小説館 二醫官傳(両像・森鴎外)」(全5話 5/5) ※【両像・森鴎外】
本の題名 松本清張全集 66 老公 短篇6【蔵書No0233】
出版社 文藝春秋(株)
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 2002/01/12●初版
価格 1631円税込み:中古/アマゾン
発表雑誌/発表場所 「文藝春秋」
作品発表 年月日 1983年(昭和58年)9月〜10月
コードNo 19830900-19831000
書き出し 鎮江(江蘇省)の宿舎を朝九時半に出た。鎮江市外事弁公室の通訳は、今日は別の仕事があってこられないが、揚州で土地の通訳がわたしを案内するため待っているということで、運転手だけが迎えにきた。昨日、乗用車を運転した青年だが、日本語が出来なかった。
運転手は濃いサングラスをかけている。六月初めで、ひざしはかなり強かった。道路の両側にはてしなくひろがる田畑に麦刈りがすすんでいた。日本のむかしの農村のように一家が総出で鎌で株を切りとるのだが、刈り取った束は、穂のついたまま道路の一部にならべてあった。車がその上を通過すると穂が茎からはなれる。その束がかなり厚いので、車は左右に揺れた。道路わきに立った農民が、タイヤの下に轢かれて穂が離れる様子をじっと見つめている。危険なのでこれは禁止されているそうだが、便利なのでやめそうにないと昨日の通訳は話していた。麦束に車を揺すられても、運転手は叱言も言わなかった。
作品分類 エッセイ 
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