題名 | 西海道談綺 三 | |
読み | サイカイドウダンキ 3 | |
原題/改題/副題/備考 | 「西海道談綺 一」・「西海道談綺 二」・「西海道談綺 三」・「西海道談綺 四」・「西海道談綺 五」 | |
本の題名 | 西海道談綺 三■【蔵書No0072】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1977/02/20●初版 | |
価格 | 850 | |
発表雑誌/発表場所 | 「週刊文春」 | |
作品発表 年月日 | 1971年(昭和46年)5月17日号〜1976年(昭和51年)5月6日号 | |
コードNo | 19710517-19760506 | |
書き出し | 宿の湯小屋を出た向井平三郎は前を行く男の後姿を見た。昼間から温泉につかっているくらいだから閑なのである。この宿も、逗留客でないほかの客は朝の早いうちに出立していて森閑としていた。向井は土間の太い柱のかげに身をかくして前方をのぞいている。入口は道路からさしこむ陽であかるく、そこにむかって動く六,七人の人影は黒かった。だが裏口からの外光がそれらの背中にうすく届いていて、人間の後姿や横顔を淡く浮き出している。旅の支度をした男を女五人と番頭一人が送り出すところだった。女のうち三人は女中である。「はてな。あの男はたしか・・・・・」・・・・・たしか太田恵之助の若党だが、と向井平三郎は口の中で呟いた。恵之助の後ろにいつも従いている顔なので、見送り人に向けてしきりと動かしている横顔に見間違いはないと思った。名前も、恵之助が「喜助」と呼んでいた。恵之助の雇人がどうしてこんなところにと向井は妙に思っている。主人の恵之助の姿は見えない。あれは日田の代官所に釘づけになっているからこんな湯山村になど来られるはずはなかった。 | |
作品分類 | 小説(長編・時代) | 270P×860=232200(1126600) |
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