研究室_蛇足的研究

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2025年08月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_172
夜が怕い

(月刊文藝春秋での発表時には、九回(1991年2月号)
※単行本【草の径】では第七話として集録・全集では七話として集録

その総合病院では夜の宿直に医師若干名と看護婦数名を置いていた。医師の人数が書けないのは、夜なかにベットの呼鈴を押してゆっくりとやってきた看護婦に、先生に来てほしいと云っても、一度として顔を見せたことがないからである●蔵書【松も清張全集 66 老公 短編6】((株)文藝春秋●「月刊文藝春秋」1991年(平成3年)2月号
〔月刊 文藝春秋〕
1991年(平成03年)2月号


その総合病院では夜の宿直に医師若干名と看護婦数名を置いていた。医師の人数が書けないのは、夜なかにベットの呼鈴を押してゆっくりとやってきた看護婦に、先生に来てほしいと云っても、一度として顔を見せたことがないからである。医師は宿直室に一人なのか二人なのか、それとも三人なのかわからない。看護婦は当直の先生の数を言明しない。私は七十五になるが、胃潰瘍でこの病院の東病棟に二カ月前から入院している。胃潰瘍と医者はいうが、癌だと自分ではわかっている。十年前に胃の三分の二を除去したが、二年前からまた様子がおかしくなった。年寄りの癌は緩慢に進行する。それに近ごろは制癌に効くいい薬ができた。私は個室に入っている。入院を申し込んだとき、いいぐあいに個室が一つ空いていた。私は小企業を営々と経営してきて、今は長男に代を譲っているが、個室の費用ぐらいは出せる。
シリーズ作品「草の径」は、清張最晩年の作品です。
発表時から単行本に収録されるまでに紆余曲折があったように見受けられる。
発表は、「月刊 文藝春秋」で、1990年(平成2年)1月号から始まっている。
1990年(平成2年)1月号=「削除の復元」
1990年(平成2年)4月号=「ネッカー川の影」
1990年(平成2年)5月号=「死者の網膜犯人像」(原題:死者の眼の犯人像)
1990年(平成2年)6月号=「「隠り人」日記抄」
1990年(平成2年)8月号=「モーツアルトの伯楽」
1990年(平成2年)10月号=「呪術の渦巻き文様」(原題:無限の渦巻き文様)
1990年(平成2年)12月号〜1991年(平成3年)1月号=「老公」
1991年(平成3年)2月号=「夜が怖い」
何れも短編であるが、以上の通り順次発表されている。(必ずしも毎月発表された訳では無いようだ)

●シリーズ作品【草の径】として単行本で出版
1991年に文藝春秋社から単行本「草の径」が、出版されている。(私は3版を蔵書/初版は1991年)
  【草の径】第一話『ネッカー川の影』
【草の径】第二話『死者の網膜犯人像』
【草の径】第三話『「隠り人」日記抄』
【草の径】第四話『モーツアルトの伯楽』
【草の径】第五話『呪術の渦巻き文様」
【草の径】第六話『老公』
【草の径】第七話『夜が怕い』

※【草の径】での集録順
 「削除の復元」は【草の径】には、集録されていない

●全集の第66巻(1996年(平成8年)3月30日/初版)
※「松本清張全集 66 老公 短篇6」では、「削除の復元」は、 シリーズ「草の径」ではなく単独で収録
全集66巻短編6では、「草の径」 収録順番がかなり違っている。
それぞれ出版事情があるのだろうが、「老公」が、草の径の第一話のように編集されていて
「削除の復元」が、単独の短編として編集されている。奇妙に感じられる。

収録内容は
 一.【草の径】(siri-zu03)
  1.老公(077__02)
  2.モーツアルトの伯楽(075__02)
  3.死者の網膜犯人像(073__02)
  4.ネッカー川の影(072__02)
  5.「隠り人」日記抄(074__02)
  6.呪術の渦巻文様(076__02)
  7.夜が怕い(078__03)

 二.「河西電気出張所」(613__03)
 三.「山峡の湯村」(046__02)
 四.「夏島」(606___02)
 五.「式場の微笑」(113__02)
 六.「骨壺の風景」(058__02)
 七.「不運な名前」(614__02)
 八.「疑惑」(004__02)
 九.「断崖」(609__02)
 十.「思託と元開」(704)
十一.「信号」(607__02)
十二.「老十九年の推歩」(608__02)
十三.「泥炭地」(677__02)
十四.「削除の復元(071)


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話は、病院もの?。病院ものと言えば「わるいやつら」が直ぐ思い出される。
まだ紹介作品には取り上げていないが、映像化されていて、馴染みが深い。ところが、データーとして残っていない。
映画化されたものは
▲1980年6月28日に松竹系にて公開された。松竹・霧プロダクション第1回提携作品。英語題名『Bad Sorts』。
上映時間は129分。槙村隆子のその後に関して、原作にないエピソードがラストに追加されている。
現在はDVD化されている。
キャスト:槙村隆子 - 松坂慶子・戸谷信一 - 片岡孝夫・藤島チセ - 梶芽衣子・田中慶子 - 神崎愛・横武たつ子 - 藤真利子

「夜が怖い」は、病院の夜が怖いと言える。
入院患者の男に残されている時間は多くはなさそうだ。それにしても杜撰な病院の実態が初めから明らかになっている。

清張作品に登場する病院は怖い印象がある。

延命の負債眼の壁不法建築春の血地の指
地の指以外は何れも紹介作品だ。病院はちょい役程度である。
キーワードとしてまとめてみた。(病院)