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松本清張_紙碑

No_655

題名 紙碑
読み シヒ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 途上 松本清張初文庫化作品集B■【蔵書No0209】
出版社 (株)双葉社
本のサイズ 文庫(双葉文庫)
初版&購入版.年月日 2006/02/20●初版
価格 548(522+26)
発表雑誌/発表場所 「小説新潮」
作品発表 年月日 1987年(昭和62年)5月
コードNo 19870500-00000000
書き出し A社から「現代日本美術大辞典」が出る。来年の昭和五十一年春という。全三巻で、目下編集中という。広子はこの話を唐沢未亡人の手紙で知った。夫の留守にきたその手紙は焼いた。広子は十五年前に死んだ画家、重田正人の妻だった。重田の死は四十六歳、広子が三十六歳のときであった。七年経って勧める人があり、子のいない広子は北野孝平と再婚した。北野は都立高校の教頭だった。広子とは七つ違いである。北野も三年前に妻と死別していた。彼にも子はなかった。北野は広子の前夫が画家なのをもちろん知っている。広子は北野といっしょになる前、彼と話した。−−重田正人さんのお名前、うかつですが、ぼくははじめてうかがいます。ぼくは高校教師で、教科は数学一本槍なので、芸術とか画壇とかはまったく昏いのですが。
あらすじ感想 何気ない日常生活の一コマである。殺人もない。愛人も登場しない。
再婚の微妙な夫婦関係を、前夫との関係で淡々と描いている。
画家である前夫と死別した広子は、体力の不安もあって高校教師である北野と再婚する。
そんな広子に前夫の画家仲間であった唐沢の未亡人から手紙が来る。
大手出版社から「日本美術大辞典」の創刊を知らされる。
広子は、「日本美術大辞典」へ重田が掲載される事を希望する。
その望みは、出版社の編集部へ電話をする行動をとらせる。
広子の中にそこまでの行動をとらせる、何があったのだろうか。

広子の再婚相手の男が他の作品どこかで登場したしたような気がした。
張込み」に出てくる、主人公の再婚相手だ。この男も「吝嗇」で...
紙碑では特別「吝嗇」とは描かれていないが、なぜかイメージがダブル。

清張作品には、「吝嗇」で、自分のことしか考えない男が時々登場する。
それも再婚相手として。(思いこみかも知れない)
再婚した女は、「前夫」をどの様なかたちで引きずっているのだろうか。
特に死別の場合、生前の生活は美化され、その楽しかった面だけが強調された想い出になるでは
なかろうか。

「日本美術大辞典」への掲載が絶望となり、落胆する広子。
>「紙の記念碑はこれで消えた」

広子は、校長の妻ではなく、画家の妻を自覚する。


2006年5月21日 記
作品分類 小説(短編) 22×460=10120
検索キーワード 画家・再婚・日本美術大辞典・記念碑・未亡人・教頭・校長・教育委員会・編集部・波濤会
登場人物
北野 広子 元重田の妻。北野と再婚。旧姓、重田広子
重田 正人 画家。広子の前夫。故人
唐沢 スミ子 画家唐沢信夫の妻
唐沢 信夫 画家。重田正人の仲間。故人
北野 孝平 高校教師。広子と再婚。教頭から、校長へ。退職後教育委員会入りを狙う
中川 A大手出版社の編集者。「日本美術大辞典」の編集部次長
篠原 恵助 波濤会を創設

紙碑




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