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松本清張_お手玉 隠花の飾り(改題)(第七話)

(原題=清張短編新集)

No_0051

題名 隠花の飾り 第七話 お手玉
読み インカノカザリ ダイ03ワ オテダマ
原題/改題/副題/備考 【清張短編新集】第七話として発表
シリーズ名=隠花の飾り
(原題=清張短編新集) 
●全11話=隠花の飾り(11話)
 1.
足袋
 2.狗
(改題=愛犬)
 3.
北の火箭
 4.
見送って
 5.
誤訳
 6.
百円硬貨
 7.お手玉
 8.記念に
 9.
箱根初詣で
10.
再春
11.
遺墨
● .
あとがき
本の題名 隠花の飾り【蔵書No0150】
出版社 (株)新潮社
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1979/12/05●初版
価格 800
発表雑誌/発表場所 「小説新潮」
作品発表 年月日 1978年(昭和53年)8月号
コードNo 19780800-00000000
書き出し 東北地方に駒牟礼温泉がある。山裾に囲まれた狭い盆地で、芭蕉の「奥の細道」に出てくる川の上流にも沿っている。三つの県の県庁所在都市にわりあい近いのと、酒造と米の集散地で知られた都市に隣接しているから山間だが、歓楽郷である。そう遠くないところには奧州随一の名刹もあって、観光客の流れを吸収している。駒牟礼温泉ホテルと旅館が約四十軒ある。高層ホテルも六つあった。見番が二つあって芸者が総勢七十人ぐらいいる。川には擬宝珠のついた朱塗りの橋が三つ架かり、両岸の柳の並木道には雪洞が連らなり、旅館・料理屋・土産物店・小映画館・ストリップ劇場・バア・飲食店・ヌードスタジオなどがならぶ。高層ホテルは丘陵地にある。この町の住民の大半はなんらかのかたちで温泉の営業と関係を持つ。農家は少数で、夜の灯に生命を輝かす町である。
あらすじ感想 最近怪女の事件がマスコミを賑わしている。
尼崎事件の
角田美代子容疑者
首都圏連続不審死事件で一審死刑判決を受け、控訴中の
木嶋佳苗被告。
鳥取連続不審死事件で一審死刑判決を受け、控訴中の
上田美由紀被告。
事件の影に哀れな男が存在している。事件の影に女ありではないようだ。

東北の駒牟礼温泉で起きた事件が二つ。
初めは、あまりに猟奇的な事件のため饒舌な芸者でも座敷では語らない話。
30過ぎの男女が九州の別府からこの温泉地に流れつく。男はホテルマン。女はマッサージ師。
二人は駆落の身、妻子持ちと亭主持ちである。二人が別府で仲良くなったように、この温泉地でフロントマンとして働く男は、出入りの芸者「藤丸」と仲良くなる。藤丸には土建屋の旦那が居て、藤丸のアパートに週に一度くらい泊まりに来る。その合間に男はアパートに行く。
男には新しい女が出来る。同じ置屋の芸者である。年は若く十九歳、「蝶弥」と言う。二人は町はずれのラブホテルで逢い引きを重ねる。二人の仲は藤丸に知れる。若い蝶弥に嫉妬する藤丸は、男と駆け落ちしたマッサージ師の女へ自分と男の関係をうちわけて蝶弥の間を告げる。
女マッサージ師は狂乱して男を責める。別府に残された男の女房は男の所在に勘づく。そこに藤丸の旦那である土建屋も二人の仲を知って暴力団の手下をつかい脅しはじめる。
切羽詰まった男によって猟奇的事件がはじまる。藤丸を殺した男は蝶弥に心中を迫り、同意した蝶弥に睡眠薬を飲ませ用意した包丁で刺し殺す。猟奇的な内容は読んでのお楽しみであるが....男は狂っていた。
マッサージ師の女は別府に戻って元の鞘に収まっているらしい。
この事件、誰が被害者なのであろうか?

話しは変わる。
情死や自殺も2年に一件くらいはある
駒牟礼温泉とは、そんな温泉地である。
角屋という料理屋がある。
主人は角野栄治。板前であった。妻はとみ子。
栄治はわりに腕の良い板前、とみ子は客あしらいの良い女、痩せぎすで色が黒く、うすい唇から出る饒舌が激しい。
子供はいない。店は繁盛して大きくなった。
今の角屋はとみ子より九つ年下の田原安雄が包丁を握っている。安雄は隣町から来る、通いの板前である。
安雄は栄治が心臓病で三ヶ月寝込んだ時に頼んだ板前である。
仕事が終われば終電で帰る生活の安雄だが、安雄を手放せないとみ子は、持ち前の饒舌で安雄を店に泊める。
二階に泊まる安雄の寝た布団にはとみ子の痕跡が残る。
心臓病で臥せっていた栄治が二階へ昇る梯子段の途中で発作が始まり転げ落ちて絶命した。
栄治の四十九日がこないうちに店は新しくなる。安雄は自分の家には帰らなくなる。とみ子と同棲を始める。
安雄の妻がたびたび店に迎えに来るようになる。無口な安雄はとみ子におびえながら「そのうちもどる」と言うのが精一杯である。そんなときのとみ子はぷいと外に出て煙草をふかしている。
安雄の妻ととみ子では勝負にならない。人を介しての仲介もとみ子の剣幕でみんな手を引いた。
繁昌する店。さらに繁昌させるには資金がいる。信用金庫の理事長を手玉に取るとみ子は金づるとして利用する。
2階の座敷はその為に使われる。安雄の煩悶する日々が続く。しかし安雄は店を辞めるでもなく、妻子のいる家に帰るでもなかった。とみ子の噂される経歴は安雄など問題ではなかった。もちろん実直な安雄の妻の比ではない。
安雄の行動は栄治のそれになる。
安雄が自殺したとの報が警察に入る。
とみ子が安雄の自殺した状況を警察に話す、首に巻かれたナイロン紐はとみ子によって解かれていた。
自他殺の推定は困難である。角屋の従業員は安雄に自殺する理由があると証言する。
安雄の葬儀も終わり遺骨を錦袋へ入れたとみ子がバアの女に問われて、
『ふふん、と鼻の先で嗤い、何よ、こんなもの、とお手玉のように空に三、四回抛り上げては両手で受け止めた。』
「安雄は死んでからも、文字どおりとみ子の手玉にとられた。」
「この話をタクシーの運転手から聞いた駒牟礼温泉の客のだれもが、それこそ躊いもなく、男があわれだな、と言う」
ありふれた結論だが「女は怖い」....

※真夏の怪談のつもりで取り上げたが、師走も半ばになってしまった。

この文章を書いている時
角田美代子の自殺の報を聞いた。(12月12日)

2012年12月13日 記
作品分類 小説(短編/シリーズ) 14P×580=8120
検索キーワード 駒牟礼温泉・芸者・駆け落ち・別府・マッサージ・猟奇・京料理・角屋・心臓病・二階・梯子・板前・怪女
登場人物
九州は別府温泉から駆け落ち。30過ぎ、妻子持ち。ホテルのフロントマン
マッサージ師の女 九州は別府温泉から駆け落ち。亭主持ち。別府では亭主とマッサージ師をしていた。
藤丸 27歳。駒牟礼温泉の芸者。土建屋の旦那がいる。駆け落ち男の愛人。
蝶弥 19歳。駒牟礼温泉の部屋ずみの芸者。駆け落ち男(ホテルのフロントマン)の愛人。
角屋 栄治 料理店「角屋」の主人。板前、大阪で修行角屋を開く。48歳。心臓病
角屋 とみ子 栄治の妻。痩せぎす、色黒、うすい唇。饒舌。40歳。以前は身体が資本の水商売?
田原 安雄 「角屋」の通いの板前。31歳。とみ子と同棲を始める。妻子持ち。無口な男。
田原安雄の妻 気の弱い妻。六つになる娘と安雄に帰るように頼む。とみ子の相手ではない

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