日本清張学会(NSG)設立記念・特別テーマ/「春の血」と「再春」
C「春の血」と「欺かれた女」 おまけです |
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比較の テーマ |
春の血 | 欺かれた女 | ||
●初出 | 1958年(昭和33年)「文藝春秋」1月号 | 1953年(昭和28年)「「メルクール」5月号〜7月号 | ||
長さ | 短編 文字数・約12600 |
中篇 文字数・約62000 |
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主な 登場人物 |
新原田恵子 | 48歳。院長夫人(夫は5年前に死亡、未亡人) | ロザリーエ・ フォン・テュムラー |
夫と死別して10年以上、未亡人50歳。 |
海瀬良子 | 46歳。社長夫人 | アンナ | ロザリーエ・フォン・テュムラーの娘(未婚/もう一年すれば30歳/生まれつきの内飜足(注1.)) | |
飯尾 | 炭坑主/田恵子の再婚相手 | ケン・キートン | エドゥアルト(ロザリーエ・フォン・テュムラーの息子)の家庭教師(24歳のアメリカ青年) | |
キーワード | 未亡人 子宮筋腫 再婚 友人 |
未亡人 子宮筋腫 恋 娘 |
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内容 | 清張が女性を描くとき、多彩な登場人物はなかなか 興味ぷかい。 海瀬良子と、友人の新原田恵子は特別な感情を持って みられていた。 そんな噂を立てられるような、仲に見られていた。 良子の夫から田恵子に縁談が持ち込まれる。 田恵子は元病院長の夫と死に別れた未亡人だった。 「ねえ、あなた、まだあれあるの?」 「あるわよ。どうして?」「あがったらしわ、もう」 美しく清楚な未亡人として描かれる田恵子。 反面、再婚相手になる飯尾は、『背が低く、肩が張って、 猪首で、髪が少なく、二つの鼻の穴は 遠くからはっきりと見える、厚い下唇』と、容赦ない醜男 として登場。 そんな二人の再婚。 「ご心配かけたけどね、あれ、あったのよ」「本当?」 それから1年ばかり、良子は、田恵子の死亡通知を受け 取る。死因は子宮筋腫。 「あれ、あったのよ」は、女の春の血ではなく、彼女の 生命を奪う命の血だった。 いささか類型的な登場人物だが、題名の「春の血」を 未亡人田恵子の女の部分に重ねて描く。 束の間の、女の春を感じる田恵子。 不幸な結末に、少し嫉妬を感じてたであろう良子の、 無邪気な友人を失った悲しみ。 ふたりの短い会話から、微妙な心理の変化を読ませる。 清張は女心を描かせても抜群だ。 2001年05月24日 記 |
翻訳のため読みづらい それも、入手本は1954年(11月15日)の出版で 半世紀前である。 (「春の血」も同じようなものだが) 大時代的な表現、今で言う差別用語 (片輪、びっこ)など少々手こずりました。 ほとんどが、 息子の家庭教師に恋する、奔放な未亡人と 合理的で、理知的な娘の会話、やりとりである。 主人公の未亡人であるロザリーエが、息子の 家庭教師に抱く恋心を、娘のアンナに打ち分け る。その課程がくどくど書かれている。 それがトーマス・マンの持ち味なのだろうか?。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− >つまり彼女の年頃の女のつねとして生理的なも >のがとどこおりがちになりつつ消滅して行くとい >う、有機的・危機的家庭の下にとにかく気分がす >ぐれなかったのだ。 恋する女に精神的、肉体的変化が現れる >「萬歳、萬歳、アンナ、あれなの。あんなに永いこ >ととぎれていたと思ったら、あれになったの。 >一人前の、いのちのある女らしくよ。何という奇蹟 >でしょうね、アンナさん。 2006年10月13日 記 |
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結論 | 読後感は全く違った。 なんだ、盗作なんて感じは全くないではないか。そんな印象であった。 しかし、書かれているテーマを考えたとき、やっぱり基本は同じだ。 これは三題噺(注2.)である。『未亡人・子宮筋腫・恋(再婚)』 三題噺の結論は、当然の帰結として 子宮筋腫から来る出血を、女の「春の血」と勘違いする切ない女心、そしてやがて来る死 に、なるのだろうか? >世の中に子宮癌という病気が存在するかぎり、これと同じ話はいっぱいあるはずである。(再春) とする清張の結論には若干疑問が残る。 【家裁調停委員の丸橋静子さん(故人)から聞いた話を「文藝春秋」に「春の血」として発表した】 とする清張は、三題噺の結論部分である 子宮筋腫から来る出血を、女の「春の血」と勘違いする切ない女心、そしてやがて来る死 をすべて聞いたのであろうか? さて、結論的に、まったく独断であるが 丸橋静子さんは「欺かれた女」を読んでいた。 「再春」のなかで、彼女がモデルらしい川添菊子が友人の話として、作者の「鳥見可寿子」へ話す が、おそらく似た状況で、清張に話したのだろう。 それは悪意があって清張に話したのかは解らない。 悪意とは、「欺かれた女」を読んでいた事を認識していたと言う意味で。 |
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注1.<内飜足(ないほんそく)> 足の奇形の一種。多くは先天性で、足が内側に彎曲し、足先 が内側に向き合っているもの。 注2.三題噺(さんだいばなし。三題話、三題咄とも)とは、落語の形態の一つで、寄席で演じる際 に観客に適当な言葉・題目を出させ、そうして出された題目3つを折り込んで即興で演じる 落語である。 |
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これで完結です。(お粗末)
2006年9月13日 素不徒破人