松本清張_黒の図説 第二話 分離の時間

〔(株)文藝春秋=全集10(1973/05/20)【黒の図説】で第二話として発表〕

題名 黒の図説 第二話 分離の時間
読み クロノズセツ ダイ02ワ ブンリノジカン
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名=黒の図説
●全12話
 1.
速力の告発
 2.分離の時間
 3.鴎外の碑
 4.
書道教授
 5.
六畳の生涯〔(株)文藝春秋=松本清張全集10〕
   
六畳の生涯〔(株)光文社=生けるパスカル〕
 6.
梅雨と西洋風呂
 7.
聞かなかった場所
 8.
生けるパスカル
 9.
遠い接近
10.
山の骨
11.
表象詩人
12.
高台の家
●全集(6話)
1.
速力の告発
2.分離の時間
3.鴎外の碑
4.
書道教授
5.
六畳の生涯
6.
梅雨と西洋風呂
本の題名 松本清張全集 10 黒の図説【蔵書No0041】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/05/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1969年(昭和44年)5月23日号〜9月5日号
書き出し 四月末の午後六時ごろ、その日とくに気温の高かったのを広告代理店外交員の土井俊六はおぼえているが、麻布狸穴の近くでタクシーに手をあげた。ドアがゆらりと開いたので、片足をかけて中をのぞきこむと顔をこっちにねじむけた運転手は三十歳前後、中肉中背のおとなしそうな人物だった。まずは、よし、と乗りこんだ。近ごろはヤクザのような運転手が多いので、一応は見きわめないと安心ができない。「どちら?」運転手はドアを閉めてきいた。「京橋六丁目」運転手は返事も、うなずきもしないで車を走り出させた。俊六は見込みがはずれて警戒が湧いた。思わず眼が運転席の上にある表示板の名に走った。《−−9426。共立タクシー株式会社。運転手、吉田庄治》俊六は仕事の上でよくタクシーを使うが、それだけ不愉快な経験を多く持っている。乗車拒否はすでに日常的である。ガソリンを補給に行かねばならない、飯を食いに行く、営業所に帰るところだから方向が違う−−これが運転手の口実だ。乗ってから行き先を告げると、営業所に帰るところだから下りてくれと強制する。
作品分類 小説(中編/シリーズ) 96P×1000=96000
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