題名 | 点と線 | |
読み | テントセン | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 松本清張全集 1 点と線・時間の習俗■【蔵書No0022】 ![]() ![]() |
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出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1971/04/20●初版 | |
価格 | 800 | |
発表雑誌/発表場所 | 「旅」 | |
作品発表 年月日 | 1957年(昭和32年)2月号〜1958年(昭和33年)1月号 | |
コードNo | 19570200-19580100 | |
書き出し | 安田辰郎は、一月一三日の夜、赤坂の割烹料亭「小雪」に一人の客を招待した。客の正体は、某省のある部長である。安田辰郎は、機械工具商安田商会を経営している。この会社はここ数年に伸びてきた。官庁方面の納入が多く、それで伸びてきたといわれている。だから、こういう身分の客を、たびたび「小雪」に招待した。安田は、よくこの店を使う。この界隈では一流とはいえないが、それだけ肩が張らなくて落ちつくという。しかし座敷にでる女中は、さすがに粒が揃っていた。安田はここではいい客で通っていた。むろん、金の使い方はあらい。それは彼の「資本」であると自分でも言っていた。客はそういう計算に載る人びとばかりであった。もっとも、彼はどんなに女中たちと親しくなっても、あまり自分の招待した客の身分をもらしたことはなかった。 | |
あらすじ&感想 | 内容はくどくど説明するまでもない。 手抜きであるが、引用する。【出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia) 】 **************** 料亭「小雪」の女中二人に、東京駅の13番線で見送られていた機械工具商会を経営する安田辰郎。 三人は、向かいの15番線に同じく「小雪」で働くお時が男と夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところを 見つける。だが数日後、お時とその男・佐山は、香椎の海岸で死体となって発見された。 一見ありふれた情死に見えたが、博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、佐山が持っていた車内食堂の 伝票から事件の裏の真相を探るため、一人捜査をすることにする。 一方、佐山は現在社会をにぎわしている××省の汚職事件の関係者であった。 この事件を追っていた本庁の刑事・三原紀一は、心中事件を追って九州へ向かい、鳥飼と出会う。 捜査の結果二人は、東京駅で13番線から15番線が見えるのは、1日の中でわずか4分しかないことを 突き止め、安田を容疑者として追及しようとする。だが、安田には完璧なアリバイがあった。 **************** すべては東京駅15番線ホームから始まる。 テーマは「偶然と作為」 そして 今でも続く「汚職事件」の展開、それは >「石田部長も笑っている一人ですか」 >三原が言った >「一番大笑いしているに違いないね。何しろ課長補佐というのは義理人情家とみえて、 >一省の危急存亡を背負ったつもりでよく死んでくれる。 >大きな汚職事件で自殺するものは、必ず課長補佐クラスだ」 毎度おなじみの展開である。 輸入米の入札をめぐる汚職事件で、収賄の疑いで逮捕された農林水産省の元課長補佐は、 別の業者から接待を受けていたことが発覚した直後、贈賄側の業者が肩代わりしていた海外旅行の代金 を返していたことがわかり、警察は元課長補佐が旅行代金がわいろにあたると認識していたとみて 調べています。(10月8日 /NHKニュース) さすがに清張代表作。 時刻表を駆使したトリック。舞台は、九州、北海道、青森そして東京 そして喫茶店(なぜか名前が?) 名コンビの刑事(鳥飼、三原/時間の習俗で再登場) 汽車と飛行機。二つの旅館(福岡=丹波屋・札幌=丸惣旅館) 汚職事件、官僚組織、警察官僚、男と女、夫婦、妻と愛人 仕掛けはすべて揃っている。最後は二人の刑事の手紙で事件の真相が語られている。 「社会派推理小説」の夜明けである。 清張自身は単行本の後書きで、「謎解きにウエートを置きすぎた」ことを少し後悔しているようだ。 ●○●○●○●○●○●○● 以前から重箱の隅をつつくように、全登場人物、全登場場所を挙げてみるのもおもしろいのでは と考えていました。 今回「点と線」で全登場人物を試みました。小説の流れが読み取れるでしょうか? ※一応、全登場人物を挙げたつもりです。ただ会話の中に登場するだけの人物もあったり 一応と言うことでお許し下さい。 ●○●○●○●○●○●○● 安田辰郎(安田機械工具商会社長。) 八重子(料亭「小雪」の女中) かね子(料亭「小雪」の女中) お時さん(料亭「小雪」の女中) とみ子(赤坂の料亭「小雪」の座敷女中。お時さんの同僚) 労働者(名島にある工場へ通勤。死体発見) 老巡査(駐在所) 刑事部長(福岡署)ほか2名(刑事) 監察医(福岡署) 鑑識係(福岡署) 鳥飼重太郎(福岡署の刑事) 佐山憲一(××省課長補佐) とき(お時さん) 菅原泰造(佐山憲一の偽名) 若い刑事 番頭(丹波屋) 女房(鳥飼重太郎の妻) 娘(すみ子。鳥飼重太郎の娘) 新田(鳥飼重太郎の娘の婚約者) 実兄(佐山憲一の兄。銀行支店長) 実母(お時さんの母。60歳ばかりの老婆) 桑山秀子(お時さんの本名) 小雪のおかみさん(とみ子をお時さんの遺体の引き取りに行かせる) 果物屋の店主(四十ばかり) 果物屋の客(若い男。博多の会社に通勤している) 「そうですな。わりあい澄んだ女の声でしたよ。...」 西鉄香椎駅駅長(肥えた赭ら顔) 西鉄香椎駅改札の係(若い駅員) 三人(改札の係があげた名前/和白の男・新宮の男・福間の乗客、男) 部長(福岡署) 三原紀一(警視庁捜査二課、警部補。がっしりとした体格、血色のいい童顔、濃い眉毛まるっこい目) 喫茶店の女の子 喫茶店の常連客 笠井警部(警視庁捜査二課、主任警部) 東京駅助役(三原紀一の聞き込み相手) 家内(鎌倉にいる安田辰郎の妻/安田亮子) ばあや(安田辰郎の妻の世話をしている) 石田芳男(××省××部の部長) 安田亮子(安田辰郎の妻。鎌倉で肺結核療養中) 老婢(ばあや。安田辰郎の妻の世話をしている。60歳くらい) 長谷川先生(安田亮子の掛かり付け医。大仏前の開業医) 急行「十和田」の乗客二人(三原紀一の北海道へ捜査の旅で出会う東北弁の客。男女は不明) 急行「十和田」の車掌 河西(双葉商会営業主任。五十ばかりの頭の禿げあがった男) 課長(警視庁捜査二課。三原紀一らの捜査に反対?。後に熱心になる) 刑事部長(札幌中央署) 係女中(札幌丸惣旅館) 公安官(札幌駅の鉄道公安官。中年) 係員(函館駅の係。若い男) 車掌(都電の車掌) 佐々木喜太郎(××省事務官) 稲村勝三(北海道庁の役人) 旅客係(日航の旅客係) 検事 若い女(三原紀一行きつけの喫茶店で相席なる) 若い男(若い女と待ち合わせ、遅れてきた男。三原紀一行きつけの喫茶店) 助役(上野車掌区) 梶谷(上野車掌区勤務。「十和田」号に乗務する車掌。三十そこそこ、いかにも気のききそうな顔) 「十和田」の乗客上役、下役(上役=石田芳男。下役=佐々木喜太郎) レインコートを着た若い女(日比谷の喫茶店) 運転手(安田亮子を湯河原まで乗せたハイヤーの運転手) 菅原雪子(お時さん=桑山秀子) 全登場場所は別の機会にしましょう...。 ■□■□■□■■□■□■□■ ※蛇足1. 発見、「ノコノシマ」(Pは、全集1の出典ページ)。残の島(P12)、能古島(P26地図)。 印刷ミス?。大発見...のつもりでした。実在は「能古島」です。が、 謂われは、皇后が住吉大明神の神霊を残して祈願したので「残の島」らしい。 どうやら昔は「残の島」と言っていたようです。 清張は、わざわざ「残の島」にしたのだろうか? ※蛇足2. 清張批判本「名探偵松本清張氏」の著者、斉藤道一氏は同書で四分間のトリックを辛らつに批判している。 東京駅のホームでの目撃を、あまりに偶然すぎる出来事で、「トリックとしてはペケ」としている。 確かにかなりの「偶然の作為」がある。その作為が可能な作為か?である。斉藤道一氏は不可能に近い作為として 批判されているが、偶然の「四分間」を読者を唸らせる場面に仕立てた、清張氏の勝ちだろう。 「点と線」は、トリックについてはかなり批判がある。その点については「松本清張を読む」細谷正充著に賛同する。 不可能に近い作為も、読者に可能と思わせるのが「小説」なのである。 そして、雑誌「旅」に連載されたことから考えても、その役割は十分すぎるほど果たしている。 「点と線」は、斉藤道一氏の批判によっても、いささかも色あせないのである。 ※蛇足のおまけ. 果物屋の客(若い男。博多の会社に通勤している) >「そうですな。わりあい澄んだ女の声でしたよ。...」 若い男にしては、「そうですな」のせりふが気になった。 2007年10月18日 記 |
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作品分類 | 小説(長編) | 109P×1000=109000 |
検索キーワード | 機械工具商・香椎海岸・汚職・女中・心中・東京駅・時刻表・課長補佐・領収書・出入り業者・赤坂の料亭 |
登場人物 | |
安田 辰郎 | 安田機械工具商会社長。 |
お時さん | 料亭「小雪」の女中。安田辰郎の愛人、妻亮子公認?。本名桑山秀子 |
桑山 秀子 | 料亭「小雪」の女中。お時さんの本名 |
かね子 | 料亭「小雪」の女中 |
八重子 | 料亭「小雪」の女中。15番線ホームの目撃者 |
とみ子 | 料亭「小雪」の座敷女中。15番線ホームの目撃者。お時の遺体を引き取りに行く。 |
佐山 憲一 | ××省の汚職事件の関係者。課長補佐 |
鳥飼 重太郎 | 福岡署のベテラン刑事 |
菅原 泰造 | 佐山憲一、旅館で使う偽名 |
菅原 雪子 | お時さん。旅館で使う偽名 |
三原 紀一 | 本庁の刑事。警部補 |
笠井警部 | 主任警部 |
石田 芳男 | ××省の部長 |
安田 亮子 | 安田辰郎の妻 |
長谷川 | 大仏前の開業医。安田亮子の主治医 |
河西 | 双葉商会営業主任。五十ばかりの頭の禿げあがった男 |
稲村 勝三 | 北海道庁の役人 |
佐々木 喜太郎 | ××省の事務官 |
鳥飼 すみ子 | 鳥飼重太郎の娘。婚約者がいる |
佐山憲一の兄 | 佐山憲一の実兄。佐山憲一の遺体を引き取りに行く。銀行支店長 |
老婢 | 安田亮子のお付きばあや。60歳の老婆? (老婢=年とった下女。) |
梶谷 | 「十和田」号に乗務する車掌。三十そこそこ、いかにも気のききそうな顔 |