研究室_蛇足的研究

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2023年4月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_143
小説帝銀事件

R新聞論説委員仁科俊太郎は、自分の部屋での執筆が一区切りついたので、珈琲でも運ばせようと思って、呼釦を押すつもりであった。●蔵書【松本清張全集17】(北の詩人・象徴の設計)文藝春秋社●「文藝春秋」1959年(昭和34年)5月号〜7月号
〔文藝春秋〕
1959年(昭和24年)5月〜7月



R新聞論説委員仁科俊太郎は、自分の部屋での執筆が一区切りついたので、珈琲でも運ばせようと思って、呼釦を押すつもりであった。窓を見ると、雨が晴れたばかりで、金閣寺のある裏山のあたりの入り組んだ谿間に、白い霧がはい上がっている。南禅寺の杜も半分は白くぼやけている。ホテルは蹴上にあって高いところだし、部屋は五階だから、このように俯瞰した眺望になるのである。下には大津行きの電車が、まだ雫の落ちそうな濡れた屋根を光らせながら坂を上がっていた。どのような美しい窓からの景色も、ホテルの長滞在の間には感興を失うものだ。仁科俊太郎は、この部屋で茶を喫むことを思いとどまって起ち上がった。場所を変えたいが、外出すると時間がかかる。四階に広いロビーがあるのでそこで憩むことにした。彼は上着をつけて廊下に出た。すぐ下だからエレベーターを利用する必要はない。彼は緋絨氈を敷いた階段をゆっくり降りた。
折しも、「袴田事件」の再審が決まった。(【速報】袴田事件の再審決定への特別抗告断念 東京高検 [2023/03/20 16:35])

実際の事件を「仮構」の世界で描き出す、清張独自の世界とも言える。
「小説」を冠した作品が幾つかある。

■【ずばり!『小説』】
小説という名の小説
小説 3億円事件「米国保険会社内調査報告書」
小説帝銀事件
小説東京帝国大学
砂の審廷 小説東京裁判


R新聞論説委員仁科俊太郎。新聞社の論説委員がホテルに缶詰で何を出筆しているのだろうか?
場所は京都のホテル。
金閣寺と南禅寺で場所を特定してみよう。



一応、特定しようと思いましたが、有数の観光地でもある京都のホテルを特定する事は無謀である事に気がつき、ただちに止めました。

では、「帝銀事件」とは?
書き出しとは離れてしまいますが、題名からして、「帝銀事件」を少しは理解しておく必要があるだろう。
例によって
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
●帝銀事件
事件発生直後の現場の様子
場所 東京都豊島区長崎(現在の豊島区長崎1丁目)
標的 帝国銀行
日付 1948年(昭和23年)1月26日
概要 毒物殺人事件
死亡者 12名
犯人 平沢貞通とされている

★帝銀事件(ていぎんじけん)とは、1948年(昭和23年)1月26日に東京都豊島区長崎の帝国銀行(現在の三井住友銀行)椎名町支店
(1950年に統合閉鎖され、現存しない)に現れた男が、行員らを騙して12名を毒殺し、現金と小切手を奪った銀行強盗殺人事件。
画家の平沢貞通が逮捕され死刑判決を受けたが、平沢は獄中で無実を主張し続け、刑の執行がされないまま、1987年(昭和62年)に95歳で獄死した。
第二次世界大戦後の混乱期、GHQの占領下で起きた事件であり、後述のように多くの謎が残るため、未解決事件とされることもある。




■関連書籍


■清張の関連書籍
帝銀事件の謎」(原題=画家と毒薬と硝煙)(【日本の黒い霧】第八話)





>ホテルの長滞在の間には感興を失うものだ。
「感興」(カンキョウ)とは?
※何かを見たり聞いたりして興味がわくこと。また、その興味。「―の赴くままに筆を走らせる」「―をそそる」