清張作品ギャラリー

シリーズ作品

 

【影の車】
作品紹介完結に当たって:素不徒破人


【影の車】の作品紹介完結に当たって:素不徒破人


作品に共通するものはないように思う。

確証』は、浮気をした女の不幸な結末。疑った夫の勘違い。
万葉翡翠』は、婚約者を殺された女の執念か、犯人が自ら蒔いた種によって花が咲き、遺体の場所の教えてくれる。
薄化粧の男』は、考えられない組み合わせが共犯者となり共謀する。結果は自由な生活が待っていたのか?
潜在光景』は、6歳の男の子は、殺人者になり得るか。殺されると思った男は、自身の過去にその男の子であった自分を見た。
典雅な姉弟』は、旧家に隠された秘密とは...近親相姦か、閉ざされた家で起こる事件を不幸な女たちの眼で描く。
田舎医師』は、自伝的要素が含まれている作品だ。清張は『半生の記』で私小説的な作品と告白している。
貧富の格差は殺人の動機になり得る。その裏に潜む葛藤が動機の源泉だ。。
鉢植えを買う女』は、なぜ鉢植えが必要だったのか? 消えた横領男の行方を知っているのは老嬢と呼ばれるその女だけだった。
突風』は、男は情けない存在だ。妻は意外と行動的だった。それが徒となり思わぬ方向に行く。

田舎医師』と 『鉢植えを買う女』は、犯人を推測して確定している。
しかし、捕まってはいない。いわば完全犯罪のような結末になっている。

なぜ、【影の車】というシリーズにまとめたのだろうか?
なぜ、全集に『突風』を外したのだろうか?

疑問と云えば、この二つが引っ掛かる。
作品はどの作品も面白い、共通点がないというこは、バライティーに富んでいて、飽きさせない内容になっている。
殺人事件が起きるが、その動機も、殺人方法も、その結果のもたらす顛末もイロイロ見せてくれる。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

●出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 
『影の車』(かげのくるま)は、松本清張が1961年8月に出版した短編集。及び当該短編集に収録された短編小説『潜在光景』を原作とする映画、テレビドラマ
短編集(たんぺんしゅう)とは、小説や漫画の短編作品を集め、1冊の本とした書籍。複数の人物の作品を集めたものはアンソロジーとも言う。
また収録作品が連作短編の場合は連作短編集と呼ぶこともある。
また、短編集に収録されている作品のうち、その題名が短編集の題名にも使われているものは特に表題作と呼ばれる。

『潜在光景』が代表作と言える
作品名   主な登場人物  作品のキーワード&作品紹介
第一話『確証』 大庭章三・大庭多恵子
片倉政太郎・肉屋の主人
不貞・田村町・陶器会社・世話女房・夜の行為・出張・性病・ステーキ・肉屋・復讐
妄想が、確証に変わる。肉体を凶器に使う。肉体は毒針の役目を果たす。おそろるべき犯罪。
性病は二人を破滅に導く。見当違いの相手に毒針は突き刺さる
復讐の手段が恐ろしい、妄想は確信となるがどんでん返しが待っている。 
第二話『万葉翡翠』 杉原忠良・芝垣多美子
今岡三郎・桑原みち子
考古学・助教授・玉・ぬな川・翡翠・姫川・登山客・新宿駅・フジアザミ・植物採取・種子・短歌・小滝川谿谷
植物の種子は思わぬ所で花を咲かせる。フジアザミは、翡翠の在処と死体の目印になった。
万葉集の歌の世界が現実の欲得を暴き出す。
 
羨望と嫉妬は彼をくるわせた。悪いことは出来ないものだ死体の側にフジアザミは咲いた。
第三話『薄化粧の男』 草村卓三・草村淳子
風松 ユリ
愛人・共謀・牛乳配達・練馬区高松町・椎名町・ゲイボーイ・ルノー・吝嗇・本妻・妾
共犯者は常に心理的脅迫者として存在する。本妻と妾が共犯者になる。殺されるのは夫、「薄化粧をする男」でる。
犯罪は自由になったはずの「愛人」の、自殺で墓穴を掘る
これも自由になったはずの「本妻」 
共犯者は意外な組合せだった。二人は立場の違いを乗り越えて自由になることが出来たのか。
第四話『潜在光景』 磯村安子・ 磯村謙一
浜島
記憶・男出入り・殺意・子持ち・未亡人・出刃包丁・毒饅頭・伯父・殺人未遂
20年ぶりに再会した男と女。女は子持ちの未亡人。6歳の子供が殺意を抱く。
潜在光景とは何。 
6歳の子供に殺人が出来るのか?殺されそうになる男の過去はその事を証明できた。
第五話『典雅な姉弟』 生駒才次郎・桃代
お染・村上光子
麻布・T坂(鳥居坂)・美男子・生駒家・不能者・肉体的欠陥・御殿・電報・婦人科・中絶・義姉
T坂に住む生駒家の姉弟。一人の男の周りに蠢く女たち、それぞれが過去を引きずりながら生きている。、
老いた美男美女の姉弟に隠された秘密は...不幸な女たち、家政婦が見たものは。
 
麻布生駒家に住む美男美女の姉弟。その生活の秘密を知る家政婦。破綻は近親憎悪?
第六話『田舎医師』 杉山良吉・杉山猪太郎
杉山俊郎・杉山博一
備後落合・三次・仁多郡葛城村・開業医・桐畑・片壁・駐在所・消防団・馬・炭・親戚・従弟・滑落・櫨の木・ハゼ
医師の杉山俊郎は、雪深い寒村に馬で往診に出かけた。往診宅は従弟の杉山博一、杉山良吉の又従兄弟に当たる。
生活状況の対比は悲劇的な結末を予感させる。 
殺人計画は成功したのか?貧富の差は憎悪となって医師を襲う。犯人は逃げ出す以外無い
第七話『鉢植えを買う女』 上浜楢江・杉浦淳一
警備課の老人
精密機械・タイピスト・結婚・金貸し・九州・身元不明・アパート・風呂・庭園・未解決・完全犯罪
容姿の醜美は女性の人生を決めるのか? 守衛の老人にお金の怖さと力を教えられた女は、
その教えに種実に生きていく。同僚の美しい女たちの転落をほくそ笑む。
ただ一人近づいてきた男にも油断しなかった。信頼できるのはお金だけだった。
彼女は完全犯罪を成し遂げたのだろうか。
強かな女の手に掛かった男は哀れにも落ちていく。男の一発逆転は悲しい結末が待っている。
第八話『突風』 葉村明子・葉村寿男
芳村和子・藤田良一
浮気・総務部長・ヒモ・私立探偵・バー・内縁の夫・調査報告書・洗面道具
平凡な夫婦。男は出世をした。多少のお金が自由にできた。女が出来た。浮気に感づいた妻は平凡な専業主婦だったが
意外な行動力を見せる。自らの行動に不安を覚えながらも、浮気相手をつきとめ、別れを懇願する。
相手の女のヒモにも頼み込もうとする。ヒモの男は悪党だった。彼女を突風が襲う。知らぬ波亭主ばかりなり。
妻は意外に行動的だった。百戦錬磨の男に絡め取られる。知らぬは亭主ばかり。