松本清張_鬼畜

題名A 鬼畜
読み キチク
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集36〕
【重複】〔(株)角川書店=潜在光景(角川ホラー文庫)〕
本の題名 松本清張短編全集7 鬼畜【蔵書No0197】 映画
出版社 (株)光文社
本のサイズ 新書(KAPPANOVELS)
初版&購入版.年月日 1964/06/20●11版1968/05/20
価格 350/古本 300(税5%込み)+送料340
発表雑誌/発表場所 「別冊文藝春秋」57号
作品発表 年月日 1957年(昭和32年)4月号
コードNo 19570400-00000000
書き出し 竹中宗吉は三十すぎまでは、各地の印刷屋を転々として渡り歩く職人であった。こんな職人は今どきは少なくなったが、地方には希にあるのだ。彼は十六のときに印刷屋の弟子入りして、石版の製版技術を覚え込むと、二十一の時にとび出して諸所を渡り歩いた。違った印刷屋を数多く歩くことを、技術の修行だと思っていたし、実際そうでもあった。宗吉は、二十五,六になると立派な腕の職人になっていた。殊にラベルのような精密な仕事がうまく、近県の職人仲間の間で彼の名を云えば、ああ、あの男か、と知らぬ者が無かった。それくらいだから雇い主は、彼に最上の給金を払って優遇した。彼は酒もあまり飲めず、女買いも臆病な方で、剰った金は貯金通帳にせっせと入れた。将来、印刷屋を開くつもりはあったのである。二十七のときに彼は女房をもった。お梅という女で、働いていた印刷所の住み込みの女工であった。痩せていて、一重瞼の目尻が少しつり上がっているほかは、さして不美人とも思えない。
作品分類 小説(短編)
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