松本清張_夜光の階段(下)(改題)

(原題=ガラスの鍵)

題名 夜光の階段(下)
読み ヤコウノカイダン_02(ゲ)
原題/改題/副題/備考 (原題=ガラスの鍵)
夜光の階段(上)
夜光の階段(下)
本の題名 夜光の階段(下)【蔵書No0112】
出版社 (株)新潮社
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1981/12/20●初版
価格 1100
発表雑誌/発表場所 「週刊新潮」
作品発表 年月日 1969年(昭和44年)5月10日号〜1970年(昭和45年)9月26日号
コードNo 19690510-19700926
書き出し 眼をさますと、横で幸子は睡っている。枕もとの赤いスタンドはつけたままだった。この程度の光だと眠りの邪魔にはならない。消すと鼻先も見えない。ほの暗いピンクの中で幸子は軽いいびきをかいていた。斜め向うむきになっているのは、抱擁からはなれたからで、いびきが出るのも、疲れのあとのせいだけでなく、男が泊まってくれた安心からだ。道夫は手を伸ばして枕もとの腕時計を灯にかざす。二時二十分だった。時計を見るのが習慣になっている。今夜は起きあがって身支度をすることもない。時計をもとに戻して、手を引き込めようとしたとき、手の甲の絆創膏が眼についた。右手である。肉色の絆創膏の端に皺があるのは、幸子がいちど引き剥いだからだが、嫉妬からくる猜疑で、寝る前にひと悶着だった。道夫は絆創膏の端を半分めくってみる。傷口は薄い黒い筋になっている。あさってあたりは、もう絆創膏をとっていい。幸子はこの擦過傷を、女の爪痕だといって責めた。邪推を解くためには秘密を明かさねばならない。当然、誤解のまま受け入れた。
作品分類 小説(長編) 578P×750=433500(302P+276P)
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