題名 | 地方紙を買う女 | |
読み | チホウシヲカウオンナ | |
原題/改題/副題/備考 | 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集36〕 | |
本の題名 | 青春の彷徨■【蔵書No0066】 | |
出版社 | (株)光文社 | |
本のサイズ | 新書(KAPPANOVELS) | |
初版&購入版.年月日 | 1964/04/20●7版1978/12/20 | |
価格 | 580 | |
発表雑誌/発表場所 | 「小説新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1957年(昭和32年)4月号 | |
コードNo | 19570400-00000000 | |
書き出し | 潮田芳子は、甲信新聞社にあてて前金を送り、『甲信新聞』の購読を申しこんだ。この新聞社は東京から準急で二時間半くらいかかるK市にある。その県では有力な新聞らしいが、むろん、この地方紙の販売店は東京にはない。東京で読みたければ、直接購読者として、本社から郵送してもらうほかないのである。金を現金書留めにして送ったのが、二月二十一日であった。そのとき、金と一緒に同封した手紙には、彼女はこう書いた。−−貴紙を購読いたします。購読料を同封します。貴紙連載中の「野盗伝奇」という小説が面白そうですから、読んでみたいと思います。十九日付けの新聞からお送り下さい....。潮田芳子は、その『甲信新聞』を見たことがある。K市の駅前の、うら寂しい飲食店のなかであった。注文の中華そばができあがるまで、給仕女が、粗末な卓の上に置いていってくれたものだ。いかにも地方紙らしい、泥くさい活字の、ひなびた新聞であった。三の面は、この辺の出来事で埋まっていた。五戸を焼いた火事があった。村役場の吏員が六万円の公金を消費した。小学校の分校が新築された。県会議員の母が死んだ。そんなたぐいの記事である。 | |
あらすじ&感想 | 地方紙を買う女とは、潮田芳子である。 『甲信新聞』を見たのは、K市である。K市は甲府市であろう。 地方紙の購読依頼を出す。2月21日である。 19日付の新聞から、「野盗伝奇」なる連載小説が面白そうだとして、購読を依頼するのである。 K市駅前では新大臣の帰郷演説、潮田芳子は男連れだった。しかし誰にも知られないような。 芳子は、渋谷でバーに勤めていた。 4、5日後『甲信新聞』が三日分まとめて郵送される。 19日付は、K市駅前での新大臣の帰郷演説が写真入りで伝えられている。 芳子にとって、退屈な記事は15日間続く、変化は15日目に起こった。 それは新聞記事からではなかった。 杉本隆治からの手紙である。杉本隆治は「野盗伝奇」の作者、作家である。 購読依頼の礼状である。 申し込みから一ヵ月後「臨雲峡に男女の心中死体が発見された。」の記事。 芳子の購読の目的は達せられた。 「小説がつまらなくなりました。続いての購読の意志はありません。」芳子は購読を断る。 購読依頼の「『野盗伝奇』なる連載小説が面白そうだ」として、 購読を依頼した結果の礼状からして、購読を断る理由は、 作家である「杉本隆治」の失望を懸念する。 杉本隆治は、購読依頼と購読の断りの経過に疑問を持ちその疑問に一定の結論を得る。 杉本隆治は、潮田芳子に興味を持つ。作家らしい興味は、潮田芳子の犯罪を確信する。 芳子の懸念は的中する。芳子の前に現れた杉本隆治は、様々な方法で芳子を追いつめる。 杉本隆治の、謎解きの再現ピクニックが実行される。芳子は最後の場面で言い逃れる。 しかし、結末は芳子の遺書となって杉本隆治に届く。 1957年の作品なので時代が感じられる。登場する作家の心理が清張自身のような気がする。 清張作品には、清張自身らしき人物が時々登場するが、その登場の仕方が面白い。 2003年12月07日 記 追記 2007年2月2日 清張には、『野盗伝奇』なる同名の小説がある |
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作品分類 | 小説(短編) | 37P×680=25160 |
検索キーワード | 甲信新聞・作家・野盗伝奇・連載小説・新聞購読・新大臣・帰郷演説・ピクニック・遺書・心中 |
登場人物 | |
潮田 芳子 | 満州に行った夫の帰りを持つ女。庄田咲次と情人関係(小説内の表現) |
杉本 隆治 | 地方紙に『野盗伝奇』なる連載小説を書く作家。 |
庄田 咲次 | 潮田芳子や福田梅子と情人関係(小説内の表現)。妻もいる。 |
福田 梅子 | 庄田咲次と情人関係(小説内の表現)。潮田芳子と三角関係 |
田坂 ふじ子 | 婦人編集者。杉本隆治と潮田芳子の再現ピクニックにつきあう。 |