「松本清張の蛇足的研究」のTOPページへ

松本清張_時間の習俗

NO_043

題名 時間の習俗
読み ジカンノシュウゾク
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 1 点と線・時間の習俗【蔵書No0022】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1971/04/20●初版
価格 800
発表雑誌/発表場所 「旅」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)5月号〜1962年(昭和37年)11月号
コードNo 19610500-19621100
書き出し 和布刈神事       早鞆の潮薙ぎの藻に和布刈るかな   雲屏
その年の、旧暦元旦は二月七日に当たった。その前夜、午後十一時ごろから、門司市内のバスが臨時に動いて、しきりと、客を北西の方にある和布刈岬に運んだ。霙でも降りそうな寒い晩だった。バスは三十分かかって狭い海岸通りを走り、海峡へ少し突き出た岬で客を降ろしした。岬は関門海峡の九州側の突端である。狭い民家の細長いつながりは、途中で切れている。この辺の家は、昼間だと軒に若布などを干したりして、魚の臭いが強かった。バスは鳥居のそばで止まった。客はぞろぞろと鳥居をくぐってゆく。境内では数カ所に篝火が焚かれていた。寒い晩のことだし、篝火の周囲には群衆がいくつもの輪を描いていた。境内のすぐ前は、暗い海だった。対岸に灯があるが、これは下関側の壇ノ浦だった。 
あらすじ感想 鳥飼重太郎と三原紀一がコンビで登場。
「点と線」で登場した名コンビが再登場、清張作品では珍しいとうか最初で最後?

名探偵シリーズのように、名探偵や名刑事が事件を鮮やかに解決する清張以前の探偵小説・推理小説
を思い起こさせる。
しかし内容はさすがに清張である。清張が暮らした北九州の小倉を舞台にした描写はきめ細かい。
「点と線」同様小説の舞台は広い。東京、相模湖、大阪、名古屋、北九州(和布刈神社)、太宰府。
特徴有る場所を織り込み清張ワールドが広がる。
時代が物語りを決める。カラーフィルムの現像は、この作品の重要なポイントである。
電報も小道具として使われる。
今では考えられないトリックが当時は可能であった。
小説は和布刈神社の神事の場面から始まる。アマチュアカメラマンを気取った峰岡が旅館に宿泊する。
彼の元へ電報が届く。知人の死の知らせである。
舞台は相模湖。碧譚亭(へきたんてい)へ一組の男女が着く、外出した二人は帰ってこない。
男の死体が発見される。男の名前は土肥武夫『交通文化情報』の発行人及び編集人である。

捜査本部の係官は首を傾げた。「殺しの動機がわからない」
警視庁から応援にきた捜査一課の若い警部補、三原紀一は怨恨説を言う。

土肥武夫の葬儀は盛大だった。参列者には
『帝都交通新聞』社長大隈達吉(52歳)、『中央自動車情報』社長佐原福太郎(48歳)がいた。
二人は土肥武夫についてたびたび捜査本部から事情を聞かれている。
この二人の所に来て挨拶を交わしている男がいる。
三十七八歳の体格のいい男である。『極光交通』専務、峰岡周一である。極光交通は大手のタクシー会社。

三原警部補は捜査リストの”博多出張中”峰岡周一を目に留める。
福岡市の大東商会(自動車部品販売業)を照会した返事が担当刑事に来ていた。
それは福岡警察署「鳥飼重太郎」のものだった。三原と鳥飼は4年前(点と線)から特別な間柄だった。
これは読者サービスだ。役者は揃った。

なぜかこの時点からる三原は峰岡周一に執着する。
極光交通を訪ね峰岡周一を調べる三原だが、峰岡は和布刈神社をカメラで撮影したアルバムを見せ
アリバイを証明する。写真は和布刈神社の次に旅館で女中をモデルに撮影したものだった。
アルバムを受け取る三原。アルバムか峰岡のアリバイを完璧に証明した。
疑問が晴れない三原はフイルムを受け取りに刑事を行かせる。待っていたようにフイルムを渡す峰岡。

峰岡のアリバイを崩すべく足取りを洗う三原。この間の検討は「点と線」を彷彿とさせる。

三原は峰岡から太宰府の近くの都府楼址へ寄ったことを聞かされる。俳句を詠む為に立ち寄ったと
言うのだ。

俳句の同人誌を発行する、江藤順平(白葉)。白葉は、表具師

三原はフイルム(ネガ)の秘密に迫る。しかし手がかりは掴めない。

事態は新たな展開を見せる。鹿児島本線水城駅近く、二十四五の男の腐乱死体が発見される。
死体のそばの女物の手袋。

改めて土肥武夫の周辺を洗う三原、場所は大阪、名古屋へと移る。

捜査が名古屋のゲイバーへ進む下りが今ひとつ理解できない。

三原の有る体験が元になっているようだ。二重橋で三原の前を通り過ぎた男女だった。
女が男、男が女

ゲイバーに勤める芳子とは須貝新太郎である。

定期券と俳句の吟行のなぞから梶原武雄が浮かび上がる。

峰岡周一を中心に須貝、梶原。事件の核心に迫って行く三原と鳥飼。
相模湖の殺人事件と水城の腐乱死体は一本の線としてつながる。


「けど、不思議ですな、三原さん」
「何がですか?」
「この事件は門司の和刈神事に始まって、潮来のあやめ祭りに終わろうとしています。まるで事件は
土俗の行事から行事にわたっているようなもんですな」

事件は潮来で終わろうとしている。



※蛇足
長編の為あらすじを書くのは大変でした。ネガのトリックなどかなり書き込んでありますが、
現代ではその状況が理解できません。後半は急ぎ足でした。読んでのお楽しみでしょう。
面白いのは「時間の習俗」には女性の登場人物がない(主役と脇役)。ゲイバーの芳子だけである。芳子は男


偶然ですが前回紹介した「疑惑」の登場人物の名前が似ている
●疑惑=時間の習俗
佐原卓吉=大隈達吉
白川福太郎=佐原福太郎



2009年11月15日 記
作品分類 小説(長編) 161P×1000=161000
検索キーワード 和希刈神事・小倉駅・相模湖畔・太宰府・名古屋・ゲイバー・写真のネガ・筑紫俳壇・カメラ
登場人物
三原 紀一 アパート暮らし。妻がいる。「点と線」から4年が経過。(点と線では33歳)
鳥飼 重太郎 52歳の老刑事。一人娘を嫁がせ妻と二人暮らし。(点と線では50歳)
土肥 武夫 『交通文化情報』の発行人及び編集人。殺される。峰岡を強請(ゆする)っていた
峰岡 周一 37〜8歳。あとで37と断定。『極光交通』(タクシー会社)の専務。犯人
佐原 福太郎 『中央自動車情報』社長(48歳)。
大隈 達吉 『帝都交通新聞』社長大隈達吉(52歳)
江藤 順平 「荒海」俳句の同人誌を発行する。表具師。俳号は白葉。
梶原 武雄 俳句の同人。アマチュアカメラマン、峯岡に誘われて上京。
須貝 新太郎 名古屋のゲイバーに勤める、芳子。福岡、水城で殺される。

時間の習俗