松本清張_風の視線

題名 風の視線
読み カゼノシセン
原題/改題/副題/備考  
本の題名 風の視線【蔵書No0048】 映画
出版社 (株)光文社
本のサイズ 新書(KAPPANOVELS)
初版&購入版.年月日 1962/08/05●115版1976/07/01
価格 600
発表雑誌/発表場所 「女性自身」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)1月3日号〜12月18日号
コードNo 19610103-19611218
書き出し 青森行き急行「おいらせ号」は、上野駅発二十三時で、列車はホームに入っていた。一等車の寝台で、作家の富永弘吉は、鉄道のマークが模様になっている浴衣に着替えて、小型角瓶を傾けていた。雑誌記者の角谷がその相手をしていたが、角谷の方は、まだ洋服のままだった。作家が落ち着いているのにくらべて、編集者の角谷はそわそわしていた。ウィスキーのグラスを口に運ぶのも、中腰の格好だった。どちらも酒のみで、そのほうでは気が合っている。角谷は腕時計を眺めては、通路を入ってくる乗客にちらちら眼をやっていた。「遅いな。」角谷が落ちつきのない眼でつぶやいた。「あと、何分だ?」作家は発車までの時間をきいた。「五分です。」「来るだろう。」と富永は平気でいる。半分白くなった髪を長く伸ばし、口をとがらしてグラスを舐めていた。眼の大きい人だった。その眼を、編集者に微笑わせて、「かわいそうに新婚旅行もできなくて、ここに駆けつけるというのだ。少しぐらいゆっくりしていても文句は言えない。」「そりゃそうですが、」角谷はそわそわしていた。
作品分類 小説(長編) 383P×800=306400
検索キーワード  
【裏】”竜崎夫人”とよばれ、若い芸術家たちに憧憬の瞳を寄せられている美貌の人妻亜矢子−−−だが彼女は、愛なき結婚と、夫の身辺にただよう黒い霧からのがれようとする努力に疲れ果てた、名家の”美しい囚人”であった。亜矢子を心から愛する二人の男−−−新聞記者久世とカメラマン奈津井−−−しかし彼らも亜矢子の孤独を救うことはできなかった・・・・・・。現代の虚無と倦怠を背景に、交錯する愛の姿が展開されてゆく。