松本清張(1118)_逃亡(改題)

(原題=江戸秘紋)

題名 逃亡
読み トウボウ
原題/改題/副題/備考 【同姓同名】
(原題=江戸秘紋)
本の題名 松本清張全集 29 逃亡・大奥婦女記【蔵書No0014】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1973/6/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「信濃毎日新聞・夕刊」(大系社扱い)
作品発表 年月日 1958年(昭和33年)7月
コードNo 19580700-00000000
書き出し 文政十二年(一八二九年)三月二十一日の巳の刻(午前十時)に江戸神田久間町河岸から火が出た。この朝一時間前にちょっとした地震があったが、ちょうど、出火の起こったころは、西北の風が土砂を吹き立てて、あたりが夜のように暗くなっていた。おりから佐久間町河岸の材木商尾張屋徳右衛門の材木小屋の前では職人たちが焚火をしていた。三月の末というと、すでに上野の桜も散ったあとだが、この日は奇妙な天気でうすら寒かったのである。材木屋の本宅では昼食の用意が出来たといって職人たちを呼び集めた。火を囲んでいた者たちは焚火のあと始末を十分にしたつもりだったが、どこか不十分なところがあったとみえ、残り火が強風にあおられて横の鉋屑に燃え移った。その火はさらに隣のは葉莨屋に移った。材木屋で気がついたときはもう手がつけられないくらいに火が燃え上がっている。激しい風は炎を横倒しに噴きつのらせ、火の粉を霰のように飛散させた。
作品分類 小説(長編・時代) 404P×1000=404000
検索キーワード 江戸の大火・賭博・岡っ引き・無宿・幕末・下谷・天馬町加賀藩・贋金造り