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松本清張_鬼火の町 

No_008

題名 鬼火の町
読み オニビノマチ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 鬼火の町【蔵書No0006】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1984/10/15●初版
価格 980
発表雑誌/発表場所 「潮」
作品発表 年月日 1965年(昭和40年)8月号~1966年(昭和41年)12月号
コードNo 19650800-19661200
書き出し 天保十二年五月六日の朝のことである。隅田川の上にあつい霧が白く張っていた。浅草側の待乳山も、向島側の三囲い神社も白い壁の中に塗り潰されたようである。「えれえ霧だ。一寸先も見えねとは、このことだ」と、独り言を呟いた小舟の船頭がある。夜が明けたばかりで、六ツ(午前六時)を少し回っていた。舟は千住のほうから来たのだが、折からの上げ潮にさしかかっているので、水の流れも湖水のように動かない。うっかりすると、方向を間違えて、どこかの岸にぶつかっりそうだった。現在なら汽笛でも鳴らすところだが、当時のことで、鼻唄でも唄うほかはなかった。船頭が警戒したのは、不意に、その厚い霧の中からほかの舟が正面に現れることだった。もっとも、朝が早いのでほかの舟も少ないに違いないが、しかし、一艘でも衝突の危険は同じだった。
あらすじ感想  時代は天保12年5月6日、具体的である。(天保12年=1842年)
天保と言えば、「天保の改革」
天保の改革(てんぽうのかいかく)は、江戸時代の天保年間(1830年 - 1843年)に行われた、
幕政や諸藩の改革の総称である。
享保の改革、寛政の改革と並んで、江戸時代の三大改革の一つに数えられる。
貨幣経済の発達に伴って逼迫した幕府財政の再興を目的とした。
またこの時期には、諸藩でも藩政改革が行われた。


時代物の長編で、登場人物も多い。
はじめに登場人物を紹介しよう。
●藤兵衛(岡っ引き)
 お粂(藤兵衛の女房)
 幸太(藤兵衛の手下)
 亀吉(藤兵衛の手下/泥亀)
 伝八(藤兵衛の手下)
 春造(藤兵衛の手下)
 銀五郎(藤兵衛の手下)
●川島正三郎(八丁堀の同心)
●吉次(紺屋/岡っ引き)
●おろく(船宿「つたや」の女将)
 仙造(船宿「つたや」の船頭/殺される) 
●橋番
●惣六(和泉屋八右衛門の職人/殺される)
 勘兵衛(和泉屋八右衛門の職人)
 お京(矢場の女)
 小春(女義太夫/惣六と訳あり) 
●お絹(向両国水茶屋の女/惣六の女)
 おふくろ(お絹と裏長屋で暮らす)
●駒木根大内記(小川町/御具足御用掛
 伊東伝蔵(駒木根大内記の御用人/切腹をする)
●釜木進一郎(小普請組)
●川路三左衛門聖?(トシアキラ)(小普請奉行/40歳)
●お美代の方(家斉の愛妾)
●中野碩翁(お美代の方の養父)
■円行寺(法華宗)
 住職
 小僧
 納所坊主(了善)
■茶店
 おくら(40ぐらいの女)
 茶店の亭主(片目の男)
■大奥
 浦風(中臈)
●お島(出雲屋/首なし死体で大川に揚がる/出雲屋の主人は新左衛門:お島と崩輩、浦風の部屋子)
●お澄(お島と崩輩、浦風の部屋子



船釣りで船頭の仙造は、客の惣六と船宿の「つたや」を出る。
隅田川に二人の遺体が揚がる。惣六(和泉屋八右衛門の職人)と仙造(船宿「つたや」の船頭)。
川島正三郎(八丁堀の同心)の配下の藤兵衛(岡っ引き)が探索にあたる。
藤兵衛の子分幸太の話では
惣六は色男で、お絹、矢場のお京、義太夫のお春とうまく立回っていた。
仙造は、「仙造は醜男で、まるっきり惣六とは反対で女ッ気はありません。船宿の船頭仲間の評判は
いいようです」
船頭と客の単純な喧嘩では無いと踏んだ藤兵衛は、川島正三郎に頼む。
「すると、ほかの舟に乗っていた者が押しかけてきて二人を殺したというわけか?」
舟の中には何も残ってないので、水の下を探したいという藤兵衛の提案に同心の川島は、
「面白いだろう...」と賛成する。

川底から煙管が出てくる。それも、女持ちのように華奢で、総体が銀造り鴛鴦の羽には金の象嵌が施され、
吸口の蛇の目籠にも細かく金の象嵌が走っている素晴らしい彫りだった。
「こりゃ豪儀なものですね。とても屋根屋の職人が持ってるようなものじゃありませんね」
幸太が惚れ惚れして見ている。
同心の川島に報告し煙管の探索をすることを告げると、仕事のほうではむら気のある川島であるが、
同意する。
豪儀な煙管の探索が始まる。

煙管を入れる袋物屋から相生屋が分かり、相生屋から注文主は小川町の駒木根大内記と分かる。
伊東伝蔵(駒木根大内記の御用人)が相生屋に頼んだのである。

「もし、伊東様」。藤兵衛は、煙管の存在をちらつかせ伊東伝蔵に迫る。 
藤兵衛と幸太は伊東伝蔵に探りを入れ、確証を得る。
つたやの女将が、釜木進一郎という小普請組をつれて訪ねて来る。目的は煙管である。
女物の煙管の持ち主を「...たとえば、身分のある大奥の女中とか...」
釜木の見立てにぎょっとする藤兵衛。
「あの煙管は大事な品です。だれかが狙っているかもしれない。盗られねようにされるがよい......」
釜木という侍は、藤兵衛の目の前から背中を返した。藤兵衛に颯爽とした印象を残した釜木進一郎。

時代は、徳川 家斉(とくがわ いえなり)、江戸幕府の第11代征夷大将軍(在任:1787年 - 1837年)
賄賂が横行している当時のまつりごと、賄賂政治の中心人物として、家斉の愛妾お美代の方の養父である
中野碩翁が登場する。

報告にやってきた幸太に、釜木進一郎の身元を洗う指示をする、藤兵衛だった。
入れ違いに川島正三郎がやってくる。
「藤兵衛、ちっとは探索は進んだか?」
「どうも、それがあんまり捗りません」
「ところで、そのことだが、都合があって、あの一件の探索はやめてくれ」
「えっ」藤兵衛は驚いて川島の顔を見た。川島はうすら笑いをして...
煙管を川島に取り上げられた藤兵衛は、釜木の煙管は大事なもの「盗られぬように...」の言葉を思い出す。
盗られたのでは無い、権威筋が堂々と奪りあげたのである。
権威筋の命令に逆らうことの出来ない藤兵衛。探索をあきらめる?

そんな中、娘義太夫のお春が殺される。岡っ引きの縄張りは、紺屋(吉次)だった。
現場に顔をだした藤兵衛であるが、川島が何食わぬ顔で現れる。「出しゃばるな」とばかり釘を刺される。
川島と吉次に別れ、思案している藤兵衛の前に釜木進一郎が現れる。
釜木に誘われるまま、向こう両国の小料理屋の二階に上がる。
二人の話で事態は急展開する。大奥に上がっている菓子屋の娘、お島を通じて煙管の出所が見えてくる。
お島は中臈の浦風に見せられたという、浦風はお美代の方にも見せたという。
殺された惣六は大奥の局の屋根を直していたのだ。
釜木は「罪のない人間が替え玉にされることです...」
「ほかの岡っ引きだと、上の方の云いなりになって縄をかけるかもしれない」
と藤兵衛に探索の継続を頼むが、藤兵衛は断る。
お銚子を二階に運んできた女中は障子を細めに開け、川の方を見ろという。
屋形船が通る。中野碩翁を乗せて。一通り登場人物がそろう。

お絹のおふくろが藤兵衛を訪ねてくる。女義太夫のお春殺しの疑いで紺屋の吉次にしょっ引かれたという。
藤兵衛は吉次を訪ねるが、川島の云いなりの吉次ではらちがあかない。
家に戻ると幸太が待っていた。伊東伝蔵が切腹したとの話である。
なかなか腰を上げない藤兵衛に、とうとう幸太が憤慨して
「親分も意気地がねえ」
眠れなかった藤兵衛は
《親分、無実の人間が下手人にされようとしていますぜ。それでも親分は黙っていなさるつもりか?》
幸太の非難するような眼が眼の先にちらついた。

藤兵衛は少しずつ探索を続ける。が、その前には川島が現れ、ことごとく邪魔をする。
釜木に会いに行く藤兵衛。ふたりは、お島の家(出雲屋)に向かう。
お島は、駕籠で笠木の家に向かったという。
釜木は云う
「藤兵衛、下手をすると、こっちまで消されかねないな」「あんたも気をつけることだ」
出雲屋の主人、新右衛門の話から浦風の部屋子で、お島の崩輩お澄が代参の名目でお見舞いにた事が
分かる。お島は病気と云うことになっている。代参は下谷の円行寺。
「法華宗だな」 中臈の浦風の菩提寺らしい。
お島を乗せた駕籠の探索が始まる。釜木は円行寺を調べる。
円行寺の門前で茶店を開く夫婦。女房に片目の男。釜木はそこで川島正三郎に会う。
夜陰に紛れて円行寺に乗り込む釜木。お島は円行寺に連れ込まれたと見当をつけてのことである。
釜木は謀られた。横合いから白い棒が流れてくるのは眼に止めた。あとは気を失った。
一方、駕籠の探索も行き詰まった。
藤兵衛のもとに出雲屋から若い者が使いにきた。主人の手紙を持ってきたのである。
手紙はお島が無事浦風の元に帰ったというのである。
早速、釜木の元に向かう藤兵衛。当然釜木は留守である。出雲屋で別れたきり帰っていないのである。
釜木の屋敷を出て五、六歩のところで、後ろから川島に声をかけられる。
川島は釜木を知っていた。(円行寺の門前で会っている)
無理矢理同行する川島は、ねちねちと藤兵衛に詰め寄る。最後に藤兵衛は川島に当て身を食らわして
一目散に逃げ出す。
家に戻った藤兵衛は、居合わせた幸太をつれて円行寺へ向かう。幸太に門前の茶店で線香を買わせ
る。片目のおやじは相変わらずの無愛想。円行寺の中に入る二人。本堂前に納所坊主。
中臈の浦風の先祖の墓参り、と納所坊主に告げる藤兵衛。
怪しむ坊主に、浦風の部屋子であるお島の代参と告げると顔色を変える納所坊主。
墓参りを済ませ早々に退散するが、それは腹ごしらえのため。
小料理屋で腹ごしらえをした二人は円行寺に戻る。幸太は銚子3本ほどご馳走になる。
「まあ、二刻くらい経って何事もなかったら、引揚げることにしよう」
藪蚊の中辛い張り込みになりそうだったが、事態はすぐに動いた。
小坊主と住職のお帰りである。藤兵衛はずばり聞く。
「もし、御住職、出雲屋のお嬢さんのお島さんをどこに隠しなすったかえ」
「知りませんよ」
詰め寄る藤兵衛
「何と云われても」
さらに詰め寄る藤兵衛は、不意に何者かに後ろから組みつかれる。「この野郎、うぬはだれだ?」
答えぬ男は力を入れてくるが、その男に幸太が飛びかかる。「この野郎、ふてい奴だ」
「幸太、そいつを逃がすんじゃねえ」「合点です」「野郎、待て」どさくさ紛れに逃げる住職。
逃げる住職に追いついて締め上げる藤兵衛。十手が聞いたか口を割る住職。
どうやらお島は向島へ移されたらしい。お島を円行寺へ連れ込んだのは浦風の使いの者らしい。
隙を突かれて何者かが住職を背負って逃げ出す。住職を背負った男は寺へ逃げ込んだのである。
男は納所坊主。幸太も逃げられてしまう。
同心の川島からの仕返しを恐れる藤兵衛、なにしろ岡っ引きが同心を突き飛ばしたのである。
川島の仕返しは紺屋の吉次が持ってくる。十手を返せというのである。
藤兵衛の子分が揃う、幸太、亀吉、伝八、春造、銀五郎。子分を前に岡っ引きの足を洗う覚悟を告げる。
幸太や亀吉の説得にも
「やかましい」と一喝する。
そんなところへ釜木が訪ねてくる。
「どうなすっている?」
「どうもこうもない。この通りだ」
「旦那。よくご無事で」
「ひどい目に遭ったよ」
一部始終を話す釜木。釜木も向島の寺に連れ込まれたようだ。釜木は言う
「いっしょにやろうぜ」
藤兵衛は川島の仕返しを話す。笠木は
「...どうだ、おれの力になってくれるか?」
幸太は膝を乗り出
して
「...あっしどももいままでどおり親分の手足なって働きます。どうか働かしっておくんなさい」
ほかの子分も頭を下げた


朝の大川に首無し死体が浮かぶ。藤兵衛に知らせたのはやはり幸太であった。
二人の不安が的中する。首無し死体は出雲屋のお島だった。

思案のあげく釜木進一郎は円行寺の納所坊主を誑かすことを考えつく。
子分の亀吉夫婦が新仏の枕経を頼みに円行寺を訪ねる。和尚は納所坊主にお経の名代を言いつける。
納所坊主は了善という。用意された駕籠に了善を乗せ、寺から離れたところで了善は捕らわれ人になる。
駕籠は場所を特定されないように五、六回、よぶんな所を回る。最後に木場近くの町裏に入る。

川島を見張る幸太夫婦。川島の家に円行寺の前の茶店のおやじが入っていく。幸太の女房は藤兵衛の家
に走った。
釜木の狙いは当たった。釜木の家を訪ねる藤兵衛。しかし釜木は家にいなかった。
ここで最後の登場人物
釜木が留守だったのは、飯田橋黐木坂上の川路三左衛門聖?(トシアキラ)を訪ねていたのだ。
川路は佐渡奉行の任期が終わり、小普請奉行として江戸に帰ったばかりであった。
川路と釜木は昵懇の間柄。
川路を江戸に呼んだのは老中筆頭水野越前守(水野忠邦)
「進一郎、今日はわしの帰府の挨拶に来たわけではあるまい。何か特別な用事でもあると見えるな?」
「実は少々お願いがあって......」
「実は少々奇怪なことがございまして」と、釜木は云い出した。
「大奥のお局を修理いたしておりまする大工棟梁の配下に和泉屋八右衛門と申す屋根師がございます。
その八右衛門の職人に惣六と申すものがおりまして、この者が隅田川で奇怪な死に方をいたしました」
「うむ」
「不思議な縁で、その惣六の死に方に、てまえ、少々かかわりを持ちました」

詳しく話し出す釜木。
「で、少しは正体が分かってきたのかの?」
「正体は分かっております。ですが、手をつけることができません」
「なに?」
「相手があまりにも大物でございます。蟷螂の斧というところかも分かりませぬ」
「だれだ?」
「向島の隠居さまでございます」
「なに?中野碩翁か?

川路も眼をむいた。
川路の「世の中は変わってゆくものじゃ」の言葉で釜木は安心する。

これから後は結論に向かってまっしぐら。
納所坊主の了善は囚われの場所から逃げ出していた。

★場面転換
竹亭と名乗る俳人が俳諧の師匠である香木に昔話をしている。
場所は深川の堀が見える小料理屋の二階。
竹亭こそ藤兵衛であった。
「円行寺の納所坊主が、大奥女中と通じていたのは意外でしたな」
竹亭は答えた。
「そうです。わたしも、その浦風が休んでいる茶店の前でお高祖頭巾の顔を剝いたときはびっくりしましたよ」
淫奔な浦風は惣六とも出来ていた。噂に高い江島生島の事になぞらえて二人の話は続く。

最後は急ぎすぎの感がある。前半が描きすぎなのかもしれない。川路の登場が偶然すぎる。
釜木が、なぜ、惣六殺しに興味を持ったのか描かれていない。
時代小説はエンターテイメントとして楽しましてくれればよい。
川島正三郎と釜木進一郎の描き方など、勧善懲悪で安心して楽しめる。
川島のその後が清張らしい描写だ。
「川島昭三郎という同心はどうなりました?」
「あのあとすぐにお役御免となりましてね、とうとう、上州だかどっかの在に引っ込んだということをあとで聞きました
...考えてみると可哀想な人でした」




----言葉の事典----
●矢場
元来は矢を射る所の意。元禄期に社寺の境内,盛り場などに出現し,
10矢で4文などの料金を取り,的や糸でつった景品を射させた。楊弓場(ようきゅうば)とも。
のち矢場女とか矢取女という接客婦がおかれて売春も行われ,次第に私娼窟(ししょうくつ)化した。
●小普請(組)
江戸時代,無役の旗本(はたもと),御家人(ごけにん)のうち3000石以下の者が編入された組織。
3000石以上の者は寄合(よりあい)に編成。
無役の旗本,御家人が営中などの小規模な普請(小普請)に人足を供する義務を負っていたことから生じ
た名称。
●江島生島事件(えじま いくしま じけん)は、
江戸時代中期に江戸城大奥御年寄の江島(絵島)が
歌舞伎役者の生島新五郎らを相手に遊興に及んだことが引き金となり、
関係者1400名が処罰された綱紀粛正事件。絵島生島事件、絵島事件ともいう。
●お美代の方
専行院(せんこういん、生年不詳 - 明治5年6月11日(1872年7月16日))は、
江戸幕府11代将軍徳川家斉の側室。俗名は美代(伊根とも)。
実父は内藤造酒允就相、養父が中野清茂とあるが、
真の実父は中山法華経寺の智泉院の住職で破戒僧の日啓である。
はじめ駿河台の中野清茂の屋敷へ奉公に上がったが、清茂は
美代を自身の養女として大奥に奉公させ、やがて美代は将軍家斉の側室になり、
文化10年(1813年)3月27日に溶姫、文化12年(1815年)10月16日に仲姫、文化14年(1817年)9月18日に
末姫を産んだ。仲姫は夭折したが、溶姫は加賀藩主前田斉泰、末姫は安芸国広島藩主浅野斉粛へ嫁入
りした。

文化元年(1803)、時は第11代将軍・徳川家斉の御代。江戸城大奥では御台所・茂子派と、家斉の側室にして世子家慶の母・お楽の方派が
対立し、奥を二分していた。
一方、家斉の寵臣・中野清茂は大奥総取締役の瀬山と結託し、僧侶・日啓の娘であるお美代を権力保持の為に家斉の側室に送り込もうと
画策する。が、お美代の大奥入りにより江戸城は混乱の坩堝と化す…。
●中野碩翁
中野 清茂(なかの きよしげ、明和2年(1765年) - 天保13年5月12日(1842年6月20日))は、
江戸時代後期の9000石旗本。播磨守。別名・中野碩翁(中野 石翁、なかの せきおう)。
通称、定之助。父は300俵取りの徒頭・中野清備。正室は矢部定賢の娘。
後妻に宮原義潔の娘を迎えたが、離婚している。また川田貞興の娘も妻とした。
鋭い頭脳を有し、風流と才知に通じていたとされる。幕府では御小納戸頭取、新番頭格を勤め、
十一代将軍徳川家斉の側近中の側近であった。
また、家斉の愛妾・お美代の方(専行院)の養父でもある。
新番頭格を最後に勤めを退いて隠居、剃髪したのちは碩翁と称した。
隠居後も大御所家斉の話し相手と随時、江戸城に登城する資格を有していた。
このため諸大名や幕臣、商人から莫大な賄賂が集まり、清茂の周旋を取り付ければ、
願いごとは半ば叶ったも同然とまでいわれた。本所向島に豪華な屋敷を持ち、贅沢な生活をしていたが、
1841年に家斉が死去し、水野忠邦が天保の改革を開始すると、登城を禁止されたうえ、
加増地没収・別邸取り壊しの処分を受け、向島に逼塞し、その翌年に死去した。戒名は高運院殿石翁日勇大居士。



2015年02月21日 記(2015年3月5日改)
作品分類 小説(長編・時代) 282P×600=169200
検索キーワード 天保・水死体・岡っ引き・大奥・銀煙管・屋根職人・大川・徳川幕府・女義太夫・円行寺・片目の男・納所坊主
【帯】久々の長篇時代推理朝霧の大川に浮ぶ無人の釣り舟。漂着した二人の男の水死体。川底に沈んでいた女物煙管はナゾを解く鍵か?反骨の岡っ引藤兵衛にのしかかる圧力の正体は?颯爽の旗本、悪同心、不気味な寺僧、大奥の女たちを配して、江戸を舞台にくりひろげる久々の長篇時代推理!
登場人物
藤兵衛 川島配下の岡っ引き。子分は幸太、亀吉、伝八、春造、銀五郎。女房はお粂。
幸太 藤兵衛の子分。一の子分だけあって大活躍をする。
釜木 進一郎 小普請組。川路三左衛門と昵懇。事件に深入りしながら、藤兵衛と共に解決に導く。
川島 正三郎 八丁堀の同心。長いものに巻かれろか、藤兵衛の邪魔をする。
惣六 屋根屋の和泉屋八左右衛門の屋根職人。大奥の浦風といい仲。仙造と共に殺される。
仙造  船宿「つたや」の船頭。惣六と共に殺される。 
中野 碩翁  お美代の方の養父。将軍家斉に取り入り実権を持つ。巨悪の権化? 
お美代の方  将軍家斉の寵愛を受ける。養父中野碩翁の後ろ盾になる。 
浦風  大奥の女中(中臈)。お島、お澄を部屋子としている。淫奔。惣六、了善が男 
川路 三左衛門  川路三左衛門聖?(トシアキラ)(小普請奉行/40歳)実質的に事件を解決に導く。 
納所坊主(了善)  円行寺の納所坊主。浦風の相手。惣六殺しの下手人 

鬼火の町




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