松本清張(1075)_任務

題名 任務 (再録)
読み ニンム
原題/改題/副題/備考 【重複】〔中央公論新社=「任務」松本清張未刊行短編集 
本の題名 松本清張研究 第十七号(2016年)【017:松本清張研究】(文学界:1955年12月を再録)
出版社 北九州市立松本清張記念館
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 2016/03/31●初版
価格 1852円+税(148円)
発表雑誌/発表場所 文學界 1955年12月
作品発表 年月日 1955年12月 
コードNo 19551200-00000000
書き出し 龍山の兵営は、丘の傾斜に沿って、次第に積み重ねるように、せり上がっていました。内地の兵舎と異って赤練瓦造りの建物は、壁に蔦さえ這い廻っていて、まるで外国の由緒ある大学構内のように壮重でした。私は段丘に層々とならんだこの建物を、営庭の端から遠く眺めて愉しんでいたものでした。
医務室は、こういう構内を見下した丘の頂上にありました。やはり赤錬瓦つくりで細長いこの建物は、いかにも積み上げの頂点のように、こじんまりとしていました。建物の前後を囲って、鉛筆のように直線的な白楊樹の群が高々と空に伸びて、そのいくつかには、朝鮮烏と隊がよんでいる鵲が巣をつくっていました。
私はこの医務室に通っていました。中隊の兵舎を出て、毎朝、勤め人のように時間を気にしながら、せかせかと坂道を上がって行きました。私の赤い襟章には黄色な二つの星があったり、それと配色を考えたように、胸には濃い緑色の山型の印がついていました。これは、衛生兵の印です。
作品分類 小説(短編) 11P×850=9350
検索キーワード 衛生兵・龍山・ニューギニア・アスピリン・入院・入室・就寝・練兵休・虱・二等兵・ヨーチン・ステる