松本清張_草の径 第五話 モーツアルトの伯楽

〔(株)文藝春秋=草の径(1991/09/30)で第二話として発表〕

題名 草の径 第五話 モーツアルトの伯楽
読み クサノミチ ダイ05ワ モーツアルトノハクラク
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集66〕
●シリーズ名=草の径
●全8話
1.
削除の復元
2.ネッカー川の影
3.死者の眼の犯人像(
改題=死者の網膜犯人像
4.
「隠り人」日記抄
5.
モーツアルトの伯楽
6.無限の渦巻文様(
改題=呪術の渦巻文様
7.
老公
8.
夜が怕い
●草の径(7話)
1.
老公
2.モーツアルトの伯楽
3.
死者の網膜犯人像
4.
ネッカー川の影
5.
「隠り人」日記抄
6.
呪術の渦巻文様
7.
夜が怕い

※「
削除の復元」が未収録
本の題名 草の径【蔵書No0039】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1991/08/01●3版1991/09/30
価格 1300
発表雑誌/発表場所 月刊「文藝春秋」
作品発表 年月日 1990年(平成02年)8月号
コードNo 19900800-00000000
書き出し 午前十時、日本人の女がタクシーでブルク劇場近くのホテルに男を迎えに来た。男は東京から来た旅行者である。片手にコートを抱え、もう一方の肩にベルトのついた重たげなカバンのようなものをさげていた。二人は昨夜シュヴェヒャー空港で初めて顔をあわせた。彼が一ヵ月前に東京の旅行社に対して申し込んだ通訳の希望は、ウィーンに長く住んでいる日本女性で市内の地理にあかるい人というのだ。旅行社からの回答は、ウィーンに十年以上住んでいて、在留邦人にはドイツ語を、オーストリア人にはイタリア語を教えているというのだった。ウィーンでイタリア語を習っているのはたいてい音楽家のタマゴで、オペラ歌手を志している手合いかもしれないと男は思った。十一月の初めで、空は黒い雲がまだらに濁って、いまにも雨が降りそうであった。寒かった。タクシーの座席に女を先に乗せた男は、肩からベルトをはずして、鼠色のズックに包んだものを膝の上に置いて抱いた。タクシーは夕方までの約束でチャーターしていた。
作品分類 小説(短編/シリーズ) 62P×630=39060
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