松本清張_美しき闘争(下)

題名 美しき闘争(下)
読み ウツクシキトウソウ_2(ゲ)
原題/改題/副題/備考 美しき闘争(上)
美しき闘争(下)
本の題名 美しき闘争(下)【蔵書No0027】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 新書(角川新書)
初版&購入版.年月日 1984/11/25●初版
価格 640
発表雑誌/発表場所 「京都新聞」
作品発表 年月日 1962年(昭和37年)1月11日〜10月14日
コードNo 19620111-19621014
書き出し 恵子はアパートで朝を迎えた。明るい空だった。屋根の間に見える木立の葉が色を冴えさせている。恵子はそれを見た途端に、今日、小説界社に行くのを止すことにした。人間は天候の加減で気持ちが決まることがある。と思った。昨夜までは迷っていたが、空気の澄んだ、朝の光線の満ちた中にいると、あの出版社もこれきりやめてしまう決心がついた。こちらから辞めれば、今月分の給料はともかく、退職金は一文も出さないに違いない。いや、その給料にしても、社長の竹倉があとで何かきっかけをつくるつもりで、容易に手渡すとも思えなかった。財布の中には二,三万円の金しかなかった。今月分の給料を貰えないとアパート代も出ない。が、それが欲しさに出勤すれば、またずるずると、あのいやな職場に残るような結果になりそうだった。竹倉にしても、前川にしても、大村にしても、どうして出版社の人間はこうもいやな男ばかり揃っているのか。そこは、近代的な企業体に見せかけて、実は前近代的な人間の醜悪な集でしかなかった。
作品分類 小説(長編) 437P×620=270940(220P+217P)
検索キーワード 離婚・週刊誌記者・女性の自立・女流作家・熱海温泉街・伊豆・桃色ルポ・奥湯河原
【カバー】「週刊婦人界」退社を決意した恵子にもたらされた知らせ−−−それは女流作家梶村の突然の死だった。梶村の愛人の評論家大村からその謎の探索に協力を求められた恵子は、奥湯河原の宿に脳溢血で一人床に伏す梶村を発見する。その境遇に同情した彼女は、梶村の未発表の原稿をマスコミに売り歩き、ようやく応急の療養費を調達するが・・・・・。男たちの醜い欲望にもまれながら健気に自立の道を求めるヒロインの美しき挑戦を描く、巨匠の長編力作。