松本清張_美しき闘争(上)

題名 美しき闘争(上)
読み ウツクシキトウソウ_1(ジョウ)
原題/改題/副題/備考 美しき闘争(上)
美しき闘争(下)
本の題名 美しき闘争(上)【蔵書No0026】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 新書(角川新書)
初版&購入版.年月日 1984/11/25●初版
価格 640
発表雑誌/発表場所 「京都新聞」
作品発表 年月日 1962年(昭和37年)1月11日〜10月14日
コードNo 19620111-19621014
書き出し 井沢恵子は門を出た。この辺の路は暗い。小さな家が多かったが、それでも住宅街だった。外灯がまばらに路を照らしている。恵子はタクシーの走っている通りへ向かって脚を大きく運んでいた。もう、バスは終わっているだろう。賑やかな通りに出るまで、まだかなりの距離があった。風が冷たかった。その冷たさが熱した頬にこころよい。わずか紙一枚の手続きだった。いや、、判コを捺すことだけで米村恵子に変わったのだ。実に何でもない瞬間だった。この手続きのために、なんと一年間、苦しんできたのだ。泪は出なかった。まだ怒りが胸にたぎっている。たった十五分前までは夫だった木村和夫と姑のミネ子に、引返して怒鳴りたくなる。大きな声で腹の底から罵倒したかった。が、彼女はその離婚届に判を捺したとき、「長らくお世話になりました」と、冷静に両人に挨拶できた。理性に勝った動作だった。その冷静さが今になって腹が立ってくる。
作品分類 小説(長編) 437P×620=270940(220P+217P)
検索キーワード 離婚・週刊誌記者・女性の自立・女流作家・熱海温泉街・伊豆・桃色ルポ・奥湯河原
【カバー】井沢恵子は姑との不和がもとで、米村和夫と離婚した。自活の道を求める彼女は女流作家梶村久子の愛人評論家の大村の紹介で「週刊婦人界」記者の職を得るが、大村と職場のオーナー竹倉は恵子の身体に露骨な欲望を示した。そしてある日、熱海温泉街の桃色ルポを命じられた彼女は、宿に姿を見せた竹倉の毒牙を危うくのがれ、伊豆山の宿に逃げ込むが、その庭で意外な二つの影を目撃した。・・・・・女性の自立をテーマに展開する長編現代ロマン