清張分室

ニュース朗読劇を鑑賞しましたニュース
2025年8月21日記

松本清張
朗読劇:前進座







朗読劇第7弾!
場所:北とぴあ
(ドームホール)
 
戦後八十年特別企画 前進座公演
北九州市松本清張記念館プロデュース

 
松本清張 朗読劇シリーズ
− 平和といのち −
2025年8月4日
張込み】【砂の器

8月4日鑑賞しました


 連日暑さが続く中、王子まで出掛けました。
ドームホールが「北とぴあ」内にあるとは知らず、フマホの地図を頼りに
「北とぴあ」を一周してしまいました。

【張込み】は、10年前に一度聞いたことがあります。
正確な記憶ではないのですが、今回、「平和といのち」のサブタイトルからして
反戦的な内容が強調されていたではと感じました。(自信はありません)

【砂の器】は、どうしても映画との比較になってしまいます。
私は原作の評価より、映画の魅力に敬服していました。
原作は、40万字にも及ぶ長編ですから、映画や朗読劇とするには
登場人物も限られてくるし、内容的にも取捨選択が迫られると思う。
映画はそれが成功して、観る者を感動させることができたと思う。
朗読劇はさらに凝縮されなければならない。
朗読の演者が、男二人に女一人という構成なので、
それに配慮された内容を感じさせられた。
三木謙一の身元が判明する場面では、映画では、養子の息子が登場したが
朗読劇は、養子の娘で、取り嫁取り婿の設定になっていた。
刑事の今西栄太郎が、亀嵩に調査に向かい、三木巡査をよく知る
老舗そろばん店の当主(映画では笠智衆が演じる)だが、未亡人の女性が登場している。

原作の「砂の器」は、殺人場面(三木謙一の殺害場面ではない)に、「超音波」を使うなど
少し唐突な内容も含まれているが、映画では完全に割愛されている。
映画では親子の放浪の旅が差別と偏見に抗う姿を重ねられ感動の場面を作り上げている。
映像の持つ力が思う存分発揮されている。
その反面、和賀英良が三木謙一を殺す動機が明確で無いと感じていました。
「彼の出世欲、権力志向が犯罪へと駆り立てる。動機は過去との決別」を動機としながら
読者・観客に投げかけているように思えた。
朗読劇では、「らい病」(ハンセン病)を明確に、表に出していた。
父親の「ハンセン病」を知られたくなかった事が動機の一因とも取れるないようだった気がした。
和賀英良の「彼の出世欲、権力志向が犯罪へと駆り立てる。動機は過去との決別」なら
空襲で焼失した戸籍を不正に再生した事など知られたくないだろうし、決別したい過去を
三木謙一は全て知っている。
しかし、三木謙一は、和賀英良の秘密を世間に吹聴する人物ではない。
映画では、その点が強調されていたと思う。
朗読劇での、三木謙一は、和賀英良の成功を喜び、その成功を皆に報せるべき事実として
吹聴することを口にしていた。
和賀英良の三木謙一殺害の重要な動機の一点として捉えているように感じた。

三木謙一を殺すことでしか和賀英良は存在できなかったのだろう。
不幸な戦前・戦中を過ごすことになった父千代吉と英良こと本浦秀夫の物語は、小説・映画・朗読劇として
平和な社会でこそ輝ける作品と言えるのではないでしょうか。




2025年8月21日


【松本清張の蛇足的研究】
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