研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室:完成登録

2022年10月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_137
見送って
(シリーズ作品/隠花の飾り:第四話)

結婚披露宴は都内の著名なホテルで行われた。だが、ホテル内に三つある式場のなかでもっとも小さいのが使用された。招待客の数は二百人と少し。午後五時から開かれた。●蔵書【隠花の飾り】(株)新潮社●「小説新潮」1978年(昭和53年)5月号
〔小説新潮〕
1978年(昭和53年)5月号



結婚披露宴は都内の著名なホテルで行われた。だが、ホテル内に三つある式場のなかでもっとも小さいのが使用された。招待客の数は二百人と少し。午後五時から開かれた。司会者は新郎が勤めている銀行の同僚だった。媒酌人は専務夫妻であった。専務は五十すぎの肥った男で酒好きらしい赤ら顔である。新婦の傍に立っている奥さんはやせていた。「一時間前に神前において新郎広瀬信雄君と新婦島村悠紀子さんとの結婚式がめでたく執りおこなわれましたことを皆さまに、まずご報告申上げます」媒酌人は荘重な口調で、型のごとく新郎の家系、家族関係、その生立ちなどを述べたあと新婦のことに移った。専務はメモに眼を落し放しだった。「悠紀子さんのお父さまは島村芳正さまとおっしゃる方で、A鉄鋼株式会社におつとめになられていましたが、いまから二十二年前に課の次長をされておられたとき、惜しいことに病気で亡くなられなした。.....
シリーズ作品【隠花の飾り】第四話

タイトルは『見送って』。
清張らしくないタイトルと言ってもよい。
題名に関する一考察』で
清張作火曜サスペンス劇場/「なぜ?一年半待てなのか!」
として取り上げた。
類似した作品(タイトルに関して)で、以下の作品を挙げた。

「なぜ「星図」が開いていたか」・「一年半待て」
無宿人別帳の第五話「俺は知らない」1958年1月
隠花の飾りの第四話「見送って」1978年5月
隠花の飾りの第八話「記念に」1978年10月
草の径の第八話「夜が怕い」1991年2月

結婚式の様子を描写しているが、式の当人である新婚夫婦はさておき、仲人の話が、新婦の父に移っていく。
亡父の話がさらに展開されそうだが
「見送って」なら、新婚夫婦を新婚旅行に見送って...かもしれない。
どちらにしても、具体的すぎるタイトルのため、誰が、誰を見送って、その後の展開が小説の主題だろう。
新婦は、島村悠紀子。父が島村芳正、A鉄鋼株式会社の次長だったが、二十二年前に死んでいる。