研究室_蛇足的研究
2020年11月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_109 【年下の男】 (シリーズ作品:死の枝 第五話(原題=十二の紐)) 〔小説新潮〕 1967年(昭和42年)6月号 |
大石加津子は、ある新聞社の交換手として十七年間勤めていた。十八の年に初めてレシーバーを両耳につけて以来、いまだに交換台に座っていた。十人ばかりの交換手の中ではいちばんの古顔であった。加津子は、べつにそれほど器量が悪いというのでもなかった。難を云えば髪と眉毛が薄いことと、背が少し低い程度で、まず十人並みの容貌だった。これまで彼女に結婚の話が二つや三つぐらいは無いではなかったが、何かのはずみでその全部を断って以来、ふっつりと彼女から縁談のことが跡切れてしまった。してみると、彼女がいまだに独身でいるのは自業自得ともいえるし、他の男の目を惹くに足りなかったともいえる。もしそうした強い魅力があれば、その後もひきつづき結婚の話があるはずであった。また恋愛の経験もなければならなかった。眉毛がうすい点はいくらでも描き眉で補えるのだから、それは大きな欠点にならなかったが、元来老成した感じを若いときからもっていた。二十五すぎると皮膚がかさかさになって小皺も早くから出来た。 |
大石加津子は、三十五歳。 >加津子は、べつにそれほど器量が悪いというのでもなかった。 >難を云えば髪と眉毛が薄いことと、背が少し低い程度で、まず十人並みの容貌だった。 >眉毛がうすい点はいくらでも描き眉で補えるのだから、それは大きな欠点にならなかったが、 >元来老成した感じを若いときからもっていた。二十五すぎると皮膚がかさかさになって小皺も早くから出来た。 大石加津子の容姿についてはかなり厳しい描写だ。 タイトルが『年下の男』だから、加津子の男(当然年下の男だと思う)が、登場するのだろうが、書き出しではその気配はない。 単純に恋愛関係のもつれから事件に発展する、そんな筋書きを想像してしまう。 職業は交換手。交換手と云えば『声』が思い出される。キーワードを【電話】とすれば、かなりの数のタイトルが挙げられる。 |