研究室_蛇足的研究
2020年5月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_103 【ある小官僚の抹殺】 |
【ある小官僚の抹殺】 〔別冊文藝春秋〕 1958年(昭和33年)2月号 |
昭和二十××年の早春のある日、警視庁捜査二課長の名ざしで外線から電話がかかってきた。呼び出しの相手を指名しているくせに自分の名前を云わない。かれた、低い声である。課長は受話器を耳に当てながら、注意深く声の背景を聞こうとした。電車の音も、自動車の騒音もなく、音楽も鳴っていなかった。自宅から掛けているという直感がした。話はかなり長く、数字をあげて、内容に具体性があり、聞き手に信頼性をもたせるに十分だった。重ねて名前を聞くと、都合があって今は云えないと、かれ声はていねいに挨拶して先に切った。ふだん話をするのになれた人間の云い方であった。いうところの汚職事件が新聞に発表されたとき、人は捜査当局の神のような触覚に驚く。いったい、どのようにして事件の端緒をかぎあてたのだろうかとふしぎな気がする。多くは、彼らの専門的な技能に帰納して、かかる懐疑を起こさないかもしれない。しかし、職業の概念に安心するのは、そのゆえにあざむかれているのである。 |
今回は、訳あってこの作品を取り上げた。 「森友問題」に関連して、自死された財務省の職員(赤木俊夫さん)の遺書が全文公開された。 自殺された財務省職員の奥様が、元理財局長の佐川宣寿と国を提訴されました。 私はこの件で、奥様を支援する行動を起こしました。 行動と言っても、キャンペーン広告に少額の寄付をしただけなんですが... https://www.change.org/p/私の夫-赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか-有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ-公正中立な調査を実施して下さい?source_location=discover_feed 清張作品には、汚職事件などで、トカゲの尻尾切りで犠牲になる小官僚(役人)が登場する。この作品はタイトルからして、 そのものズバリの感じがする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 発端は、警視庁捜査二課へ掛かってきた電話。キーワードは【電話】? ※捜査第二課 詐欺や通貨偽造、贈収賄、背任、脱税、不正取引や金融犯罪、経済犯罪、企業犯罪等の金銭犯罪・知能犯罪を取り締まる部署である。 選挙違反や公務員職権濫用その他の公権力に関する汚職についても二課で取り扱っている。 捜査二課長への名指しの電話に、課長は、「受話器を耳に当てながら、注意深く声の背景を聞こうとした。」 少々まどろっこしい書き出しだが、タイトルの「ある小官僚の抹殺」にふさわしい始まり方である。 |