研究室_蛇足的研究
2020年01月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_101 【声】 |
【声】 〔小説公園〕 1956年(昭和31年)10月号〜1956年(昭和31年)11月号〕 |
高橋朝子は、ある新聞社の電話交換手であった。その新聞社は交換手が七、八名いて昼夜勤が交代であった。三日に一度は泊まりが回ってきた。その夜、朝子は泊まり番に当たっていた。三名一組だが、十一時半になると、一名残して二人は仮眠する。これも一時間交代だった。朝子は交換台の前にすわって、本を読んでいた。一時半になったら、三畳に蒲団をのべて眠っている交代者と代わる。代わったばかりだから一時間近い時間があった。その間に三十ページぐらい読める。その小説が面白いものだから、朝子はそう意識しながら読んでいた。その時、電話が外部からかかってきた。朝子は本から眼を離した。「社会部へ」とその声は云った。声には聞き覚えがあったから、すぐつないで、「もしもし、中村さんからです」と、出てきた眠そうな声のデスクの石川に伝えた。それから眼をふたたび小説の世界に戻した。その間に、電話は切れた。 |
電話交換手という職業があった。 ※交換手(電話交換手) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 構内交換機のオペレーター(1952年) 交換手(こうかんしゅ 英:Telephone operatorまたはSwitchboard operator )とは、 電話通信の初期で手動の電話交換台が使用されていた1960年代頃まで、 一組の電話プラグを適切なジャックに差し込むことにより、 電話回線を接続する業務を行っていた人のこと。電話交換手とも。 電話交換手は一般的に、非常に強力なコミュニケーション能力が必要とされた。 交換手の遠距離ダイヤル通話と顧客の長距離直接通話(DDD)回線が登場する前は、 電話交換手が遠方の電話局にいる相手と協力して長距離電話(いわゆる市外通話)を完了していた。 通話は完全管理の状態で、交換手はプライベートな会話を聞くことができる立場だった。 交換手はかかってきた電話呼び出しに応答してそれらを正しい内線電話に接続することを 内線交換機(PBX)で要求された。 今では担当部署へダイヤルインか、直通電話が常識で交換手経由で担当部署へ繋ぐことはない。 以前は、代表電話に掛けて交換手を経由して繋いでいた。 だから、電話を掛けた主は、交換手の女性のと直接話すことが出来た。 逆にベテランになると、交換手の女性も客の声を聞いただけで判別できた。 交換手の女性は、受付の役目もする重要な役割を果たしていた。ある意味花形の職場でもあった。「声」美人と呼ばれる人もいた。 登場人物の高橋朝子は、声を聞いただけで「中村」と分かり「社会部」へつないだ。 交換手が七、八名いて、昼夜交代なのだから大手の新聞社だろう。 題が、ずばり「声」だから高橋朝子の声を聞き分ける能力が話の展開に重要な役割を果たすのだろう。 ただ、時代背景はそれなりに理解していなければ話に入っていけないだろう。 清張作品の一文字「題」の一つだ。 作品を列挙してみると (題名に関する一考察/一文字は多い) 影 指 月 賞 顔 声 点 鴉 葛 蓆 疵 山 |